伝説のハンドレス

 フジワラは洞窟の中で目を覚ました。

「目を覚ましたのか。」

 男はフジワラに声をかける。この男の名はウエストと言う。

「神崎ひなた19歳JKとの戦いは見ていた。お前のカラテはお粗末すぎる。あんなワザマエでよく生きてこれたな。」

「お前、切る!」

 フジワラは刀を抜いてウエストに襲いかかった。それをウエストは素手で受け止めた。

「だから、言っただろ。カラテが甘いと。」

「あんた、何者なの?」

「俺の名はウエスト。ハンドレスアーツを修めた最後のサティスファクションだ。」

「ちょっと何をいっているのかわからない。」

「仕方ない。サティスファクションについて説明してやるか。」


 賢明な読者はご存知だろう。サティスファクションタウンの初代市長の鬼柳京介の事を。

 鬼柳京介は下層地区の一画を納めた男である。ツジギリやニンジャが襲いかかって来る下層地区において単独の人間が実現した唯一の例だ。鬼柳の使ったインフェルニティとハンドレスコンボは伝説となる。

 ある日、鬼柳はこの街にやって来た。当時はサティスファクションタウンという名前では無かったが、ルールは同じだ。黄昏時に決闘を行い、勝者が全てを手に入れる。

 鬼柳は決闘を制しこの街を納めた。それから荒れ果てたこの街の復興に尽くす。サティスファクションタウンの平和は魔王神崎ひなた19歳JKがこの街に表れるまで続いた。

 サティスファクションとは、彼を慕い彼の流派を修めた者達の総称だ。かつてはこの街の象徴でもあった。


「どうして、私を助けた。」

 話を聞き終わったフジワラはウエストに尋ねる。

「お前にハンドレスアーツを教えてやる。神崎ひなたを殺したいのだろ?」

 フジワラにはウエストの申し出を断ることはできなかった。


「まずは刀を捨てよ。ハンドレスは無手の技。持たざる者の武術だと心得よ。」

「最初に覚えるべきはクリアマインドだ。明鏡止水を体得するために滝に打たれよ。」

「走れ。走れ。走れ。スピードの中でしか得られない境地がある。」

「ハンドレスには多くのワザがある。しかし、基本のムーブメントは1つだ。デッキからカードを抜け。デュエルマッスルを鍛えろ。基本のムーブメントこそがドローだ。」

 フジワラは辛い修行に耐える。全ては神崎ひなたを殺す為だ。


「よし。基本は出来たな。後は実践だ。」

 ウエストとフジワラは睨み合う。クリアマインドによってウエストの動きがよく見えた。

 ウエストが動く。重心移動を用いた歩行術縮地。ウエストはフジワラの気を外し間合いを詰める。正中線をとらえたウエストは正拳突きを出す。

 フジワラはそれを防いだ。しかし、ハンドレスコンボはここから続く。

 下段蹴り肘鉄鉄槌裏拳膝蹴り頭突き…

 止まることがない高速の連撃がフジワラを襲う。しかし、そこはニンジャ。連撃の僅かな間を見逃さずに距離をとった。

 フジワラは駆け出した。ニンジャの走行スピードはバイクすらも凌駕する。

「アクセルシンクロ。呼び覚ませ、我が魂。ニンジャソウルオーバーリミット!!」

 フジワラのカッチュウが光だし姿を変える。

「成功だ。よくやったフジワラ。これなら神崎ひなたにも勝てるかもしれん。」

 待っていろ、神崎ひなた。フジワラは決意を新たにサティスファクションタウンへと歩を進めた。

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