神崎ひなたの悔恨
神崎ひなた19歳JKは椅子に腰を下ろして目をつぶった。
埼玉(敬称略)は私が殺したはずだ。どうして生きている。
魔を司る王と呼ばれるこの女にもただの女の子だった日々が存在していた。その在りし日の出来事を。戻ることは叶わない日常を神崎ひなたは思い出していた。
「ひなたんの小説エモエモで最高だったよ!」
藤原埼玉(敬称略)は場も弁えず騒ぎだす。
「止めろ!お願いだから止めてください。」
神崎ひなたは藤原埼玉(敬称略)を制止しようとするも、半ば諦めていた。
ネオサイタマにある本物川第二高校では、もはや恒例となっているやり取りだ。
「でもでもでもでも、ひなたんの小説は本当に最高だったよ。ひなたん最高!ひなたん最高!お願い抱いて!!」
「だから、それを止めろと言っているだろうが!」
藤原埼玉(敬称略)のテンションは高まって行くばかり。このやり取りは教師が二人係りで止めるまで続いた。
放課後、神崎ひなたは図書室へと向かった。小説のネタを探す為だ。そこには例のごとく藤原埼玉(敬称略)がいた。
「ひなたん見てこれ。本物の魔術書だよ。」
藤原埼玉(敬称略)は本を手に持ち近寄ってくる。別に魔術書を探していたわけではない。ただ、ファンタジーを書くための資料を探していただけで。
「あ、でも面白そう。」
神崎ひなたはその本に引かれていった。思わず藤原埼玉(敬称略)に近づいて本を受けとるぐらいには。
「おい、日本語じゃないのかよ。」
思わずツッコミを入れてしまった。しかし、何故か神崎ひなたには内容が理解できた。
精神を再構築。魔術は精神作用を現実へと顕現させるもの。優れた語り手は、体験したものしか語れないのではない。語った事が体験になる。
エレメントの知覚と魔力の自覚。この世界はエレメントにより構成されている。エレメントを操る事で全ての現象は己の意思により再現できる。
魔術の行使。生け贄の選別。箱庭の卵。人間のアニマ。魂の流転。賢者の石。アスクレピオスの杖。
そして、ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。ニンジャ。
神崎ひなたは本を閉じた。頭痛がする。
「ちょっと体調が悪いから帰るね。」
「大丈夫?ひなたん。」
藤原埼玉(敬称略)は心配そうに神崎ひなたを見つめる。
「大丈夫だから。1人で帰れるから。」
神崎ひなたは藤原埼玉(敬称略)を振り切り帰途へついた。
神崎ひなたは自宅に帰っても頭痛が治まらなかった。あの本の内容が頭の中で繰り返される。
精神を再構築。エレメントの知覚と魔力の自覚。魔力の行使。生け贄の選別。箱庭の卵。
神崎ひなたは自分に何が起きたか理解できなかった。返し忘れた魔術書が枕元へ置かれていた。
日が明けても神崎ひなたの体調は戻らなかった。知覚がおかしい。物体の伊吹を感じる。
学校へ行くと人、人、人の感情が神崎ひなたへと流れ込んでくる。
「繝九Φ繧ク繝」谿コ縺吶∋縺励?」
「繝九Φ繧ク繝」谿コ縺吶∋縺励?」
「繝九Φ繧ク繝」谿コ縺吶∋縺励?」
「繝九Φ繧ク繝」谿コ縺吶∋縺励?」
何、これは何?意味がわからない。人間のアニマ?これが?そんなまさか。
「ひなたん、おはよう(^3^)/」
藤原埼玉(敬称略)は神崎ひなたに挨拶する。いつもの光景。
「ひっ!?」
神崎ひなたは怯えたような声を出す。そして、教室から逃げ出した。
神崎ひなたは一週間ほど寝込んだ。状況は全く改善しない。生け贄の選別。箱庭の卵。
ひっきりなしに鳴るスマホは藤原埼玉(敬称略)からの着信が積み重なる。
アスクレピオスの杖は今何処にある?賢者の石は?先ずは殻を破らなきゃ。学校へ行こう。
神崎ひなたは学校に着くと屋上へ向かった。人間のアニマが流れ込んでくる。
「ニンジャ谿コ縺吶∋縺励?」
「ニンジャ谿コ縺吶∋縺励?」
「ニンジャ谿コ縺吶∋縺励?」
ニンジャ。そうニンジャだ。ニンジャがニンジャでニンジャをニンジャにニンジャなニンジャもニンジャへニンジャかニンジャよニンジャでした。
「ひなたん。体調は良くなったの?」
藤原埼玉(敬称略)が話かけてくる。
「もうすぐ良くなるよ。」
神崎ひなたは答えた。
「じゃあ、新しい小説の続きも書けるよね。良かった。とっても楽しみ。」
藤原埼玉(敬称略)は見るからに嬉しそうだった。
「小説はもう書く必要はありません。いや、ないのよ。想像は全て現実になる。物語を紡ぐ必要はもうない。」
「ひなたん、ちょっとおかしいよ。そう言うのは私の役割じゃん。ひなたんには似合わないよ!」
「藤原埼玉(敬称略)、あなたは生け贄に相応しい。」
神崎ひなたはそう言うと屋上に入る扉を開けた。
精神の再構築は既に出来ている。次は生け贄だ。隣の藤原埼玉(敬称略)を見た。
「埼玉、お願い。騾�£縺ヲ」
神崎ひなたは魔術を顕現させた。魔方陣が屋上から天へと上がっていく。
「ひなたん、何?何をやっているの?」
学校は魔導師へと為るためには最適な場所である。箱庭の卵。その殻を破る。
その日、本物川第二高校は消滅した。
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