一日目(6)
俺は手を伸ばし、天板の埃を左右によける。
徐々に光を放った何かが姿を現し始め、ようやく埃の中から出てきた“銀色のそれ”を俺は手のひらに乗せた。
「五百円じゃん、それも旧硬貨だし!」
銀色のそれ、旧五百円硬貨が外から入ってくる光に反射して淡い光を放つ。
「うわー……旧硬貨なんてレアじゃないか?」
そういや、十年以上も経った今では金色の物ばかりで旧硬貨はほとんど見かけなくなってしまったな。
でも小さい頃はこいつだったし、初めて今の五百円硬貨を見た時にゃ俺は──
「うっ……!」
その瞬間、強く殴られたかのような激しい頭痛が襲った。
頭を両手で押さえつけても痛みは変わらず、次第に呼吸が荒くなってくる。
死んだのに頭痛があるなんておかしいだろ!
それにここまで痛いのは初めてだぞ!
「う、うぅッ!」
脂汗がこめかみから頬へと流れる。
とにかく立っているのも辛い、今はどこかで休まないと。
「そ、うだ……い、椅子……」
辺りを見渡した俺は駅の待ち椅子を見つけ、ふらつきながら待ち椅子へと近づいて腰を下ろした。
どうせ死んでいるんだからスーツが埃だらけになっても問題ない。
それより今はこの頭痛を何とかしないと調査が出来ないぞ。早く治ってくれ!
しかし思いとは裏腹に痛みは増し、視界がぼやけてくる。……これ、かなりマズいのでは。
──すると突然、耳元でよく分からない“音”が聞こえた。
《ドンドン、シャーン》
「え……?」
何の音かは分からない。
そしてその音を最後に俺の目の前は真っ暗になってしまった。
夏色の砂時計 多木すと @ystgi3310
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