第27話 三か月後に向けた計画

『ねぇ、カーマイン。王都で店を開こうと思ったら、何が必要なの?』

『店ですか? 一店舗だけであれば申請を出すだけで可能ですよ』


 それは調べたので知っている。


『本当にそれだけ?』

『はい。二店舗目からは審査がありますが、一店舗目は店舗さえ用意出来れば可能です』


 王都では流行りを逃したくはない為、審査は緩めなのだと言われた。

 怪しい店でないかどうかも、開店時に確認されるだけ。逆にそれが怪しいと思っていたのだが本当にそれだけらしい。


『随分緩いね』

『各地で勢いのある店が出て来ては流行らずに撤退することが多いので、今の形になったと聞いています』


 裏話として。王都では貴族街が一等地になる。そして貴族街の土地は王家か貴族が持っている。

 賃貸契約をする際の契約料がかなりお高めで、一か月で撤退しようと返金はされない。土地の持ち主はそれで儲けていると教えてくれた。


『あー、土地の持ち主としてはむしろサイクルが早い方が儲かるんだね』

『その通りです。悪質な貴族は敢えて微妙な店を誘致するとの噂も聞いたことがあります』


『庶民街はどうなの?』

『庶民街は不動産屋で建物ごと売っている場合の方が多いですね。賃貸の場合、契約料は貴族街に比べればかなり安いですが……何故店のことを?』


 期間限定だけれど、店をやってみようかと考えていることを話した。


『勉強は大変になるとは思うけれど、売上げが上がれば皆の給料にも分配出来るし、どうかなって』


 マーガレットが特にピンチなことは既にカーマインも知っていた。


『私は商会での経験が積めるので有難いですが、素人が手を出して成功するとは思えません』


『私、自国で商会を持ってて、商会長してるよ』

『え』


『私、商会長。十歳から』

『十歳から』


『まっ、経営は店長に任せきりだし、こっちに来ちゃったから約三年しかちゃんとやってないけど』

『ああ、なるほど』


 でも前世の記憶があるから、多分もっと経験者なはず。


『でも仕入れはほとんど私』

『え』


『王都を散策しながら何となく調べていたけれど、庶民街なら需要があると思うんだよね』

『散策』


 皆のやりたいことをやったとして、それを商品にすれば目的も出来ていいと思うのだ。


『お菓子だって漠然と考えるより、誰に食べてもらうか考えて作った方が具体的なアイデアが出るでしょ』

『それは、そうでしょうけど』


『店長は私がいなくて大変だって言ってたから、誰か従業員を寄越してもらおうかなって』

『大変な時に有能な従業員が抜けるのも大変ですよ』


『売上が出れば許してくれると思う。店長目指している子もいてるし』

『……』


『まずは店長に相談してみる』

『それがいいです』


 店長を説得する為に計画書を書いていたら、カーマインが見たがったので見せたら驚いていた。

 思っていた以上に具体的だったらしい。店長に提出した数日後には、本格的に動く前に副店長を迎えに来いと返事が来た。


 店長からの返事は私に直接届いたのだが、夜に黒い封筒が細く開けた窓の隙間から飛び込んで来た。

 ちょうど私と一緒に居間にいたアリーナが「ぴゃあ!」と言って尻もちをつきそうになったので咄嗟に魔法で助けたら、「ふにゃ!」と言わせることになった。カーマインに怒られた。


『本格的に動く前に、副店長を迎えに来いって店長から返事が来たよ』


 具体的な話をしたら皆も乗り気だったので、ルークが国に帰ったついでに連れて来てもらうことにした。

 勉強との両立は大変だが、皆マーガレットのことを知っていたからだとも思う。後私が商会長なことも大きい。


 これからは必要になるかと、翌日ルークを皆に紹介した。ついでに私が頻繁に外出していることも伝えた。


「そっくりですね……」

「いやその前にこの人窓から来ましたよね? 不法侵入では?」

「王宮の警備は?」

「いやそもそもルーデンベルド様が窓から外出……」

「気付かなかった……」

「魔法使いってやっぱり凄いですね!」


「ルークアロットールと言います。ルークと呼んで下さい。ところで、ここの料理人は腕が良いとルーから聞いているのですが」

「料理人はこちらの二人です。ルークの分の夕食も用意させていますので、よろしければご一緒に」

「楽しみだ」


 ルークは美味しいと評判の王都周辺のお店は既にほぼ網羅。だがイマイチという評価を既に下している。

 今日の話をしたら、心の底から楽しみにしていた。


 流れるようにルークが椅子に座り、食事が運ばれてくるのを待つ姿勢になった。周囲は唖然としていた。

 皆の質問をスルーしたからかな?


「どうしましたか? 自分でカトラリーや食事を取ってくる形式ですか?」


 ルークは何も気にしていない。お花畑でビュッフェ形式は存在しないと思う。


「魔法使いは少々変わった人が多いのです。気になさらないで」

「気になります……」


 フォローしたのに無理ってこと? それは困る。


「賓客が晩餐会に来たと思って対応してみましょう。これも勉強です」


 強引に進めてみたところ皆が動き出し、話を聞いていたルークがちゃんと出来ていないところを指摘していた。

 ルークは料理人を気に入り、概ね有意義な晩餐会になったと思う。


『あの、ルーデンベルド様。ルークアロットール様はお兄様でしょうか』

『長いからルークって呼べばいいよ。よく間違えられるけど、はとこだよ』


『はとこ、はとこですか』

『祖母の兄の孫』


『えーと、魔法の国での立場は』

『立場? ハーシア一族として知られているくらいかな』


『なるほど?』


 変に王族があるせいで、魔法の国の身分制度がない状況が理解しにくいようだ。

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魔法の国の王女様 相澤 @aizawa9

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