14回目の夏

今の季節は夏。私は14歳。

私、夏は好きだよ。まあ暑いのが得意な訳じゃないんだけどね。

なんか気分が明るくなるの。朝晴れてるだけで気分が上がるのと同じかんじかな。

早起きは苦手だけど、夏のピカーっとした朝日を見るとなんとなく起きようかなーって気持ちになれる。


あとは、もちろん夏休み。毎日友達とたくさん遊んだりして、すごく楽しかったのを覚えてる。たくさん笑ったのも覚えてる。

今も思い出して笑ってる。


夏祭りも行った。気になる子と。多分あの時のこと、一生忘れられないと思う。

ずっとどきどきしててうろ覚えな所もあるけど……あの笑顔とか、思い出すだけでどきっとする。


私は夏が好き。楽しい思い出も、素敵な思い出もある夏が。

来年の夏。14歳の夏も楽しみだな。




◇―◇―◇




ひんやりとした空気。その空気は、とても夏と言うことを感じさせないくらい冷たかった。寒いと言うのとはまた違うような。とてもここにはいられない。

けれど、それは無理なことだった。


目の前にはベッドがあって、そこに一人の女の子が横になっていた。その子の顔は、嬉しくも悲しくもない、周りに何も感じさせない顔をしていた。


ううん、違った。あの子は何も感じられないんだ。

だって、あの子は紛れもなく、






わたしと言う存在だから。






周りに人は誰もいない。もうここでできることは全部終わったんだね。




◇―◇―◇




あの夏の日。

私は去年一緒に夏祭りに行った男の子と、また夏祭りに行くことになってね。

すごく楽しみにしてたの。13歳の時、お祭りに一緒に行ってから、なんとなくいい雰囲気になって、そのままこの日を迎えたって感じ。

私は少し胸に淡い期待を感じながら、待ち合わせ場所に向かった。

けど、その時事故に遭って——




◇―◇―◇




「まあ、しょうがないんだけどね。

 何もできなかったんだけどね。


 でも。でも、私は14回目の夏を



 



 迎えたかったな」



一粒の涙が頬を伝ってつうっと地面に落ちた。

けれど、それは誰も見つけられず、誰にも感じられなく消えた。










まるで、私の想いのように。

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短編集 綾羽 @ayh13626

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