私の友達

ジャンル・ホラー

―――――――――――――――――――――――――――――

美空みくちゃん、そのゴム可愛いね!」

「ほんとだ!どこで買ったの?」

「美空ちゃんってほんとおしゃれだね!」


ああ、うるさい。少しは静かに出来ないのかな。

私は周りの子達に呆れていた。うっかり思いっきり睨みそうになる。

けど、そんな事したら私の本音がバレるのは分かってるから、頑張って抑える。


「早くチャイム鳴れ!」


「ん?美空ちゃん何か言った?」

「あ、ううん、なんでもないよ!

 えっとー、こ、このゴムいいでしょ~昨日買ってもらったんだ~」


慌てて笑顔を作り、にっこり笑い返す。

話が上手く反れて良かった…その上さっきのお世辞にも答えられるなんて、さっすが私。


キーンコーンカーンコーン


「あ、チャイム鳴っちゃった。」

「また休み時間話そうね!」

「う、うん!」


はあ、今日もテンション上がんない。


◇―◇―◇

私には友達がたくさんいる。

これは、誰だって一度は憧れるものだと思う。だって、私も前までそうだったから。

けど、いつぐらい前かは思い出せない。そもそも憧れていたことの記憶すら曖昧。

まあそんなことはどうでもよくて。


実際、友達が多いと言う環境で過ごす私の学校生活は、元々の性格に合わなかったようだった。

毎日たくさん話しかけられ、私が何かを変えればすぐに食いつき褒めまくられ。

窮屈で窮屈でしょうがなかった。


◇―◇―◇

「つっかれたー!」


私はいつもの通学路を歩きながら腕を伸ばした。

いっつも通りの景色、いっつも通りの風。

まだ日が暮れているくらいの時間なのに、まるで夜更かしをした時みたいに眠気が私を襲ってくる。


「今日は一段と無理しすぎたのかもな……


 はぁ、新しい友達が欲しい。今と違う友達」


そうぶつぶつ言いながら歩いていた時、私はあることを思いついた。

とたんに顔がにやける。


これが、困った時の神頼みってやつだよね。


◇―◇―◇

私はそこの道からすぐにある神社に来た。

一応この前も通学路だから毎日通るけど、入るのは初めてかもしれない。


初詣にお賽銭を入れる場所。名前は分からない。

その前に立ち、両手を合わせお願いする。


―新しい友達が出来ますように―


すると、そのまま私の頭にモヤモヤーと何かが広がった。

夢の中に引き込まれていくみたい。


すると、前に少し人型が見えた。その光景は完全に夢と同じ。

それは少しづつ形を定めて行き、やがてくっきりと人の形になった。


網谷あみや美空みくさん。貴女は私に祈り事をしましたね』


声からして女の人だ。


問い詰められるような言い方に、私は少しおびえる。


「は、はい……」


『ふふ。そんなに怖がらなくてもいいんですよ。願うことに罪はないのですから』


そう女の人は言い、悪物のような、まるで私に笑いかけるような笑みを見せる。

少しの身震いを感じた。

けど、この人が何を言っているかは1ミリも理解できなかったし、『罪はない』って言ってるんだから、私をバカにしてる訳じゃないのかな。


「あ、あの…わ、私の願いって、叶えてもらえるんですか!!」


勢いあまって声が大きくなる。

けど、その女の人は表情を変えず、こう答えた。



『ええ。貴女の願い通り、新しい友達を贈りましょう』


「やった!」


まるで友達を私へのプレゼントに例えているような言い方に少し引っかかるところがあったけど、そんなことは今どうでもいい。だってこんな簡単に願いが叶うんだもん。


『—ただし期限が過ぎると記憶が消えてしまいます。それでもいいですか?』


「……」


私は急に無言になる。


って、何悩んでるの私は!元々今の友達に飽きてるんだからここに来たんでしょ!!

そう頭の中で何回も唱え、モヤモヤを飛ばす。


「はい!いいです!」


『本当に?』


「はい!」


そのままの勢いではいと答えてしまった。いやいや、これでいいの。いいの!!


『分かりました』


気づいたら、私は最初の通学路に立っていた。


◇―◇―◇

翌日。私はいつも通り学校へ向かった。

ランドセルを机に置き、いつも通り用意をし、本を読み始める。

いつもならここで皆が来るはず。

ここで来なかったら昨日の夢みたいな出来事は本当だったということ!

少しドキドキしながら私は本を読む。


「み~くちゃんっ!」

「うわっ!」


急に真横から話しかけられた。

え…?な、なんで…?

願ったはずなのに…?


そう思いながら、私は横を向いた。


「え?」


すると、そこにいたのは全く知らない女の子だった。

長くて少し茶髪の紙をポニーテールにして、ニコッと明るくはにかむ女の子。

あ、あれ…こんな子いたっけ…


「ん?どうしたの美空ちゃん?」

「あ、な、なんでもないよ!」

「それより、私ずっと美空ちゃんと話してみたかったんだよね!

 いつもおしゃれなもの持ってるし、クラスの中心の子だし!!」

「そ、そうなんだ…あ、ありがとう…」

「ねえ、私と友達になってくれない?」


すっと差し出された白い手。

私は少しこんらん気味で、その手を握った。


◇―◇―◇

それからと言うもの、私はこの子とずっと一緒にいるようになった。

登下校の時も、移動教室の時も。

気付けば、この子と会ってから2ヶ月くらい経とうとしている。


ただ、私はこの2ヶ月間で気になる所が何個かあった。

一つ目は、私はこの子と学校以外で遊んだことがない、この子の好きなもの、嫌いなものを知らない。そもそも、名前まで知らないということだ。

今まではこういうことは全部知っていたはずなのに。

まあ、こういうケースもあるものなんだろうな。私達は大親友だもん。

大親友の私達がそうなんだから、皆だってそうだよ。

前がおかしかっただけだ。


………あれ?前って、何…?

最初から私の友達はこの子だったよね??

初めて私に話しかけてくれて…あれ?



「美空ちゃん!その鉛筆可愛いね!どこで買ったの?」


――ああ、うるさい。


◇―◇―◇

『ふふふ。だからあの時言ったのに。

”期限が切れたら記憶が消える”って。あれは友達との思い出の記憶じゃなくて、最初からの記憶の事だったのよ??

今回の子は賢そうだから頼ったのに…あれ、けどこれで頼るのって何回目だっけ。

あの子は毎回私の元へ来て、お願いして、けど期限が切れる度に今までの記憶が消えて―

いつになったら分かるんでしょうね。



あ、けど私が記憶を消してるからずっと分からないままなのか』

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