僕は、彼女の本当の姿を見ていなかった。

 主人公は何か考えだすと、そこに没入してしまう性格だった。そのため友達も多くなく、彼女のも当然のようにいない。そんな主人公が恋をしたのは、明るくて優しくて、ムードメーカーの愛らしい少女だった。
 主人公はバレンタインに逆チョコを贈って、少女に告白するために親友に助言を求める。親友は友人たちの中、唯一彼女持ちだった。しかも、親友の彼女は女子大生だった。主人公は、親友が実は過去にコミュ障だったこと。そして主人公のおかげで親友がコミュ障を克服したことを教えられる。親友は主人公に感謝していると言い、背中を押してくれた。
 そしていよいよバレンタイン。主人公は少女を呼び出すことに成功するが、少女は思いがけない言動に出て――。

 人は外見では判断できないということを、まざまざと見せつけられる一作で、タイトルの『ビターチョコレート』の意味が、最後にすとんと腑に落ちます。ラストは衝撃的ですが、表面にこだわる時世を批判的に描写しているようにも思えました。

 是非、ご一読ください。