ずっと一緒にいる約束をしたので双子の美少女二人に告白した

しゆの

第1話

「あの……りょうくん、これは……」


 リビングで今田遼いまだりょうは、同じ年の幼馴染みである白川美冬しらかわみふゆを抱き締めていた。

 学校から帰ってきていきなり抱き締められたからか恥ずかしがっており、普段は白い美冬の頬がかなり赤くなっている。

 お互いのおでこは軽く触れ合い、キスできるほどに距離が近い。

 あくまで幼馴染みで恋人同士ではないのだが、抱き締めても抵抗しないのは物心ついた時からずっと一緒にいるからだろう。

 それほどまでに遼と美冬は仲が良いのだ。

 中学卒業と共に両親から一人暮らししてくれと言われて近場のマンションを借りているが、美冬は毎日のように来てくれる。


「俺は美冬のことが好きだからな。こうしたくなる」


 好きな人と触れ合いたいと思う気持ちがあるから抱き締めているのだ。

 昔から一緒にいたため、遼は自然と美冬のことが好きになった。


「ん……。私も遼くんが好き」


 それは美冬も同様だ。

 頬は赤くなっているも表情はそれほど変わらず、美冬は基本的にクールだ。

 藍色の瞳は上目遣いで見つめており、絶対に視線をこちらから外さない。

 やっぱり凄い可愛いなと思い、遼も美冬のことをジッと見る。

 肩ほどまである銀色の髪はとても綺麗だし、長いまつ毛に縁取られた大きな瞳、雪のように白い肌はまるで人形を見ているかのような錯覚を覚えてしまいそうになる。

 あまりにも美しすぎて学校の男子は見ているだけで美冬に近づくようなことはせず、安易に話したりするのは幼馴染みである遼だけだ。

 他の人からしたら美冬はアイドルのような存在であり、気軽に話すことなんて出来ないと思っている。


「遼くんを好きなのはお姉ちゃんも」

「だろうな」


 美冬には双子の姉もおり、もちろん物心ついた時から遼と一緒にいた。

 二卵性だからそっくりというわけではないが、姉妹だけあって似ている部分は多い。


「だから俺たちは三人一緒にいたい」


 昔から三人でいるのが当たり前だったため、遼は美冬の姉である美夏みなつのことも好きだ。

 双子だけあって美夏も美冬並の美少女であり、どちらか選べと言われても選べるわけがない。

 ちなみに美夏は用事があるとのことでいない。

 もう少ししたら来るだろう。


「三人一緒に?」

「ああ。ずっと三人がいい。どちらか選んで一緒にいれなくなるのはごめんだ」


 どちらか選べないのであれば、二人とも選んでしまえばいい。

 そして三人で幸せになる。

 一人暮らしを初めて一ヶ月ほどたって慣れてきたため、このタイミングで告白がベストだと思ったのだ。

 美冬と美夏がゴールデンウィーク前に家族で旅行に行かなかったら連休中に言ったいたが。


「ん。私もそう思う」

「だから俺は二人とも選ぶ。それが三人で幸せになる方法だ」


 どちらか選んで三人が幸せになるのなら教えてほしいくらいだ。

 高校生になって一ヶ月毎日のように考えたが、選ぶのは無理だったので二人とも愛すことに決めた。

 選ばないで二人と一緒にいるなんて他の人からしたらクズと思うかもしれないが、そんなことはどうでも良い。

 三人で愛し合い、将来は死ぬまで一緒にいる。


「それに三人で一緒にいたらいっぱいイチャつける」

「そうなの?」

「うん。例えば美夏が料理を作っている間はくっつくことができないが、その時間は美冬とイチャつけるから俺は寂しくない」

「遼くん天才」


 単なるずっとイチャついていたいクズだ。

 一人暮らしをしてから二人は料理を作りに家にやってくる。

 中学までもあったことだが、一人暮らしになってからほとんど毎日になった。

 なので少なくとも了承を取れている美冬とは好きなだけイチャつくことが出来る。


「いっぱいイチャイチャして三人で愛し合おう」

「ん。遼くん大好き」


 キスを期待するかのように美冬は目を閉じるが、まだ遼はしない。


「キスは美夏が来てから三人で」

「ん。何をするのも三人一緒が良い」


 いつも三人一緒だし、美夏が来てから三人でキスすることにした。

 これで美夏を差し置いて美冬とキスをしてしまったら怒ってしまうだろう。

 三人同時にファーストキスをし、このまま沢山愛し合いたい。

 それが遼と美冬の想いであり、美夏も思っていることだろう。

 ずっと三人一緒にというのが昔した約束なのだから。


☆ ☆ ☆


「二人は……何をやってるの?」


 遼が三人で一緒にいると宣言してから少し時間がたち、家に美冬の双子の姉である美夏がやってきた。

 二人には合鍵を渡してあるので、いつでも遼の家に来ることが出来る。

 ただ、イチャイチャしているのが予想外だったらしく、美夏の表情が固まってしまった。

 せっかくの可愛い顔が台無しだなと思い、遼は美夏のことを見る。

 腰まで伸びているサラサとした綺麗な髪はツインテールにしており、少しつり目の大きな瞳、美冬と同様の白い肌はやっぱり極上の美少女だ。

 ただ、美冬は白をイメージさせるが、美夏はピンクが似合うだろう。

 ストロベリーブロンドという桃色の髪にアメジスト色の瞳は美冬と一緒で宝石のような美しさだ。

 ちなみに二人の髪や瞳の色は両親からの遺伝で、美夏は母親、美冬は父親と同じ色。

 母親はヨーロッパと日本、父親はロシアと日本の血が混ざっている。

 美夏は母親の特徴が強く、美冬は父親の特徴が強く出ているため、姉妹であってもここまで違いが出てしまった。

 もちろん顔の輪郭や体型は似ており、モノクロ写真で見たら二人が姉妹というのに誰だって納得するだろう。

 あくまで髪や瞳の色が違いすぎるだけ。


「美冬とイチャイチャしてるだけ」

「イチャイチャって……付き合っているの?」

「そうだな」


 三人一緒にいるということは、付き合っていると言っても過言ではないだろう。

 でも、美夏には付き合っていると言われて堪えたようで、今にも泣きそうな表情だ。

 この場から離れたいと思っているかもしれない。

 妹と好きな人がイチャついているのだから。


「そして俺は美夏とも付き合う」

「……は?」

「俺は美夏も大好きだ。だから三人で幸せになりたい」


 そう言ってか遼は美夏のことを抱き締める。

 離れていかないように華奢な身体を力いっぱい抱き締め、美夏のおでこに自身のおでこをコツンと当てた。


「な……な、なな……」


 何かしゃべりたそうにしている美夏であるが、恥ずかしさからか声が出ていない。

 目は左右に泳いで耳まで真っ赤にしており、美夏は美冬と違って感情が表に出やすいのだ。


「だから美冬と一緒に俺の彼女になってくれ」

「な、何言ってるのよ? 完全に二股になるじゃない」

「そうだな。だけど俺はずっと三人でいたい。美夏か美冬のどちらかなんて選べない」


 ずっと一緒にいるという約束……他の人にどれだけクズ呼ばわりされようとも破りたくない。

 それが三人で幸せになる唯一の方法なのだから。

 どちらか選んで二人きりになるくらいなら、クズ呼ばわりされても三人一緒を選ぶ。

 デートも三人でして、初体験だって三人でしたい。


「抵抗しないってことは俺のこと好きってことでいいんだよな?」


 わかりきっているが、念のために確認しておく。


「はあ? 何を勘違いしているの? 私が遼を好きだなんてあり得ないことよ」


 否定するのは予想通りであり、美夏は素直になれないツンデレだ。

 明らかに遼に好意があるのに、美夏は一切認めようとしない。

 それ以外は比較的素直で真面目なのだが、遼に関することだけはいつもこうだ。


「美夏が素直じゃないことはわかっているからな。だから先に美冬に言ったんだ」

「どういうことよ?」

「こういうこと。美冬おいで」


 遼はチョイチョイと手で手招きし、美冬を自身に引き寄せた。

 そして美冬ともおでこを合わせ、三人の距離が非常に近くなる。


「あ……これって……」

「そう。昔はこうしてたな」


 一緒にいるという約束をした時にもこうやって三人でこうしていた。

 ここまで近いと嘘をつけば目線をそらしてしまうため、約束をする時はいつもおでこをくっつけていたのだ。

 三人ではおでこというか当たるのはこめかみ付近になってしまうが。

 美冬に先に言っておいたのは、美夏が来た時にこうしようと示し合わせていたから。

 普段はツンデレの美夏でも、こうやっておでこを合わせるとかなり素直になる。

 ただ、久しぶりにするからか、美夏の頬はかなり赤い。

 中学になってから全くしていなかったし、しょうがないと言えばしょうがない。


「もう一度言うけど俺は三人で一緒にいたい。だから美夏と美冬を彼女にする」

「……美冬はそれでいいの?」

「ん。私は三人一緒がいい」

「そう……そうね。三人ずっと一緒って約束したものね」


 昔を思い出して恥ずかしさがだいぶ減ったのか、美夏はゆっくりと目を閉じる。

 ここまできたら素直になれないということはないだろう。


「美冬の言うことには素直だな。流石はシスコン」

「うるさい」


 先に美冬に言っていた一番の理由は美夏が重度のシスコンだからだ。

 かなり美冬のことを溺愛しており、一時期は姉妹で愛し合っているんじゃないかと噂になったほどだ。

 美冬が三人が良いと言った以上、美夏に拒否権はない。


「私は遼のことが大好きよ。その気持ちだけは美冬に負けていないと思ってる」

「ん。私も遼くんを好きな気持ちは負けていない」


 二人ともそれだけは譲れないのだろう。


「遼はこんな容姿の私たちに偏見なく接してくれるわ」

「ん……」


 日本で珍しい容姿をしている二人は、子供の頃は遼しか友達がいなかった。


「ずっと一緒にいてくれるから私は遼のことを好きになったわ」

「ん。私も」


 二人にとって同年代の異性は遼しかおらず、一緒にいる内にそのまま好きになったようだ。

 もう二人には遼と一緒にいることしか考えていないだろう。


「美冬の望みでもあるし、三人で付き合ってあげることにするわ」

「上から目線」

「しょ、しょうがないじゃない。恥ずかしいんだから」


 ツンデレな美夏はこうでもしないと素直になれない。

 ちゃかしすぎるとまたいつもの美夏に戻ってしまう恐れがあるので、これ以上は止めておく。


「うん。ファーストキスはまだしてないから、今から三人でしよう」

「そうね」

「ん」


 一度少し離れ、遼たちはゆっくりと唇を近づけていく。

 美冬は相変わらず表情にあまり出ていないが、内心は恥ずかしがっているだろう。

 一方の美夏は完全に顔に出ており、恥ずかしがっているのが丸分かりだ。

 柔らかくて潤いのある美夏と美冬の唇が触れる。

 ファーストキスを三人でするなんてほとんどの人が経験しないだろう。

 でも、何をするのも一緒がいいため、三人はこれからも一緒にキスすることになる。

 絶対に抜け駆けなんてしないで、三人で幸せになればいいのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ずっと一緒にいる約束をしたので双子の美少女二人に告白した しゆの @shiyuno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ