とあるヴァンパイアの異世界転生

獅子山シグ

1滴目 さよなら人生。

異世界転生。憧れちゃうなぁ。勇者になって、魔王を倒すのもいいし、冒険者になって最高ランクを目指すのもいい。俺TUEEEEEEEEなんてのも流行ってる。好きな最強スキル選んで、国や人を救ったり、いや、最弱スキルの抜け穴を見つけて、チートスキル展開ってのもオツだな。正体を隠して暗躍し、学園で影のトップにおさまる…ってのも魅力的だ!


……なんにせよ、憧れちゃうなぁ。異世界転生。


「レン〜!朝ごはん、できたわよ〜!」

自室で妄想に耽っていたら、もう六時。まだまだあたたかな布団に包まれていたいけれど、この家で母さんに逆らうことは愚の骨頂とも言える所業。俺はしぶしぶパジャマから制服に着替える。

「早くしなさ〜い!」

一階から聞こえる母さんの声には、だんだんと苛立ちが見え始めた。ヤバイヤバイ。

「今行くよ〜!」

携帯もカバンも後ででいいや。とりあえず……と階段を急いで駆け下りる。


そこでふらっと視界がぶれる。

めまいだ。

そう思った瞬間、身体は傾いていた。

ああ。

壁に身体をうちつけ、右手で手すりをつかもうとするが、すべり、左手は何もない宙を掻く。

無様に、そして、あっという間に、俺は階段から滑り落ち、


ごん。


鈍い音とともに、暗闇の世界に誘われていた。

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とあるヴァンパイアの異世界転生 獅子山シグ @shishiyama

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