1つの詩

葉月 涼

最後に残った君の美しい瞳


瞳を見つめ1人雪降る夜空に呟いた


「どうして僕は…」



出会ったのは雨の降る寒い寒い冬のこと

静かに降り続けるその雨に心まで震えていたんだ


温もりを求め

叶わなくて諦め

僕は全てを捨てようと

最後に眠りに任せた


悴んでいく指先と

遠くなる生への執念

そして目を閉じ

どれだけ時間が経ったか分からない

でも雨が止んだことに気付く


白く大きな傘をさし僕に向かって微笑む君

君は僕に優しく

「君はどうしてここで眠るの?」

そう言って僕に白い手袋をつけた手を差し出した


僕はその姿に見た事も聞いたことも無いはずの

女神様

という言葉が脳から零れ口に出た


君は小さく笑い僕に告げる

「私はね、そんな大層なお方じゃないよ

私は、言うなればただの死神なんだ」


まるで子供が冗談を言うように

なんでもないように

その言葉を微笑みとともに

明るく

軽く

そして

命を狩るものの冷たさ

を感じさせるように言った


僕は驚きはしなかった

僕は

自らを死神と語った

その少女に見える者に

小さく淡い望みを見つけた


その望みが何かは分からない

だけど

確かに僕の心になにかが灯った


驚かない僕を見て彼女は

「驚かないんだね、

君みたいな子はいつぶりにみたんだろう…」

そういい手袋をいつの間にか外した手を僕の頬に優しく近ずけ

とても愛おしそうな表情で

どこか悲しそうな表情で

「いや、違うのか…

久しぶりに会えたね、

本当に生まれ変わって来てくれた…」

そうとても小さな声で呟いた


僕にはなんの事だか分からなかった

でも、

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1つの詩 葉月 涼 @kiminokoe

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