第二章 使命を探す旅

第11話 砂漠

飛翔ひしょう!」

 

 頭の中に、悲痛な飛王ひおうの声が響いた。


「ひ……」

 答えようとして、飛翔は咽た。

 喉がカラカラだった。暑くて暑くて体が動かない。


 俺はいったいどうなってしまったんだ?

 このまま死ぬのだろうか……


「良かったー生きているわ。お父さん!」

 

 その時、明るい少女の声がした。

 そして、飛翔の体に覆いを掛けて、影を作ってくれた。


 そうか……この暑さは照り付ける日差しのせいか。


 飛翔は体がスーツと楽になって、少女の心遣いを本当にありがたいと思ったが、どうにもじゃりじゃりした砂が痛くて、目を開けることができずにいた。


 ここはどこだろう?

 飛王の元へ戻れたわけでは……無いな。



 少女は次に手慣れたしぐさで、飛翔の首を持ち上げて自分の膝の上に乗せた。

 そして、慎重に濡れた布で顔を拭き始めた。丁寧にいたわる様に。

 そして最後に、口の端に少し水を含ませてくれた。生き返るようだった。


 ああ! 俺は生きている! 生きられた!


 飛翔はゆっくりと目を開けた。

 そして、命の恩人の顔を見上げてハッとした。


 リフィア!

 

 でも、その面影は瞬く間に消えた。


 リフィアであるはずがない。

 

 逆光でよく見えないが、もう一度目を凝らして、少女をよく見た。


 リフィアと同じ金髪だ。

 でも、瞳の色が違う…

 雰囲気も…


「目を開けたわ! 良かった」

 ほっとしたような声が降ってきた。


「あなた、なんだって、こんな所に倒れていたのよ! たまたま私たちがここで発掘作業していたからよかったけど、普段は誰もいないのよ! 死んじゃうわよ! しかもこんな軽装で!」

 呆れたようにいいながら、

「でも、本当に良かったわー生きていて」

 少女は微笑んだ。


「私の名前はフィオナよ。よろしくね。あなたは? 名前言える?」

「あ……ありがとう……助けてくれて。私の名前は……飛翔ひしょう……」

 かすれた声で、なんとか言葉を絞り出すが、飛翔は力が抜けてそれ以上続けられなかった。


「ああ、ごめんなさい。少しずつ水をあげるから、ゆっくり一滴ずつ飲んでいって。少し休まないとね。荷台に乗せて行ってあげるわ。ゆっくり休むといいわ」


 俺はどこに来てしまったのだろう……

 これでは飛王を助けられないじゃないか。


 悔しくて涙が出そうになったが、涙すら流せないほどカラカラに乾いていて、動けなかった。

 

 フィオナがくれる一滴ずつの水に、少しずつ体が楽になる。

 まさに生き返るとはこのことだなぁと思いながら、飛翔はいつしかまた眠ってしまった。

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