第189話「反省会をしよう」
ジョットの家での反省会にジーナとふたりで参加する。
手土産は協会で買った肉とお茶でかまわないだろう。
公式のパーティーだったらもっとフォーマルに沿ったものが必要になるけど、内輪の集まりだからだ。
ジョットの家は王都の中でもかなり立派で、五人の執事と四人のメイドが出迎えてくれる。
中には学園内で見かけた顔もあった。
「ようこそいらっしゃいました。ラスター様」
中年のイケメン執事が彼らを代表してにこやかにあいさつをする。
立場上ジーナが無視されるのは仕方ない。
「たいしたものだ。さすがと言うべきか」
ここで褒めたのは執事たちではなく、彼らを雇っているジョットの実家、トラフォード家だ。
「恐れ入ります」
二十歳くらいの美人メイドに案内され、俺はジョットたちが待つ部屋にたどり着く。
部屋は十人掛けのテーブルを置けそうなほどの広さで、今は俺たちを入れて五人しかおらず、大きめの丸テーブルがひとつ置かれているだけ。
テーブルを囲うように椅子が四つ並んでいて、俺の席以外はすでに埋まっていた。
「やあ、ラスター、来てくれてありがとう」
ジョットと笑顔で握手をかわす。
使用人たちはおそらく彼の実家に今回のことを報告する役目もあるだろう。
帝国皇子と関係が良好だと思われるのは、きっと彼のためになる。
じゃなかったらもっと使用人たちの目がないところで、反省会をやるはずだからな。
ジーナから手土産を渡す。
「これは帝国産かい?」
と聞かれたが表情から察するにジョットのジョークだ。
「残念ながら時間がなかったから、メルクストの商会で買わせてもらった」
俺はあえてまじめに答えを返す。
「それはありがとうございます」
先に来ていたライルが恐縮して礼を言う。
「気にしなくていい。品揃えがいい商会で買うのは当然だ」
忖度したわけじゃないと告げる。
これは信じてもらえなくてもべつにかまわない。
俺の返事にライルがさらに恐縮したところで、飲み物が運ばれてくる。
「じゃあさっそく会をはじめたいと思うけど、かまわないかな?」
とジョットが俺に聞いた。
「ああ。だけど、その前にお疲れさまの乾杯をしたいな。みんな、疲れは残っているだろう?」
俺の言葉に三者三様に肯定の表情を浮かべる。
「そうだね。今日はよく眠れそうだよ」
とジョットが言うとライルとカルロも笑った。
「俺も初めてダンジョンに行ったときはそうだった」
と俺は過去をふり返る。
いまとなってはなつかしい気持ちもあった。
「君も同じなんだね」
ジョットはすこし意外そうにこっちを見る。
「ああ、きっと最初は誰でもそうさ」
サラやジーナは落ち着いていた気がするけど、言わぬが華かもしれない。
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