第188話「今さらだよ」
「反省会を開きたいと思うんだが」
王都に戻ってきたところでジョットが提案する。
「いいんじゃないか?」
ダメな部分を洗い出し反省して、次につなげるというのは重要だ。
同じ失敗を繰り返さないためにも、やったほうがいい。
反省会なんて実はまともにやったことがない俺が言うのもなんだけど。
ジーナ、勝手に修正してくれるから楽なんだよな……ダメだ、どう考えても俺たちは悪い見本にかならない。
逃避を兼ねて空を見あげてみればまだ夕方だった。
俺とジーナが出歩いていても、あのふたりは何も言わないし、いつ帰るという連絡すら必要としていない。
楽で助かるけど、あいつらはそれでいいのか?
典型的なお前が言うな案件かもしれないが。
「なら夕飯でも食べながらやるか?」
と俺は言いながら、王都にいい店があるのか想像してみる。
……あまり行かないので全然浮かんでこない。
もっと食べ歩きをするべきだったかと反省していると、
「それならうちに来ないか?」
とジョットが次の提案をおこなう。
「君の家にかい?」
俺じゃなくても聞き返す場面である。
王国貴族が帝国の皇子を家に招くというのは、たとえ事実がどうであっても政治的匂いを排除できない。
ジョットはわからないほど馬鹿じゃないはずだ。
「君の懸念はもっともだけど、今さらだよ。一緒にダンジョンにもぐっているのに、仲がよくないなんて通ると思うかい?」
と考えていたらカラカラと笑われてしまった。
「それはたしかに」
ダンジョン探索は何かが狂えばすぐ死につながる危険行為である。
それをいっしょに行うということは命をあずけあうということ。
信頼関係がないなんて言ったところで、誰も信じてくれないだろうな。
己の考えの甘い部分にようやく気づく。
同時にサラやティアとの関係でも、俺自身と周囲の認識に違いがあるかもしれないと思い当たる。
「……教えてくれてありがとう」
俺は小声でジョットに礼を言う。
単に家に招きたかっただけですむほど彼は単純じゃない。
俺が気づいていないようなら指摘しておく、というのが本当の狙いだろう。
「何のことだい?」
とぼけたときに一瞬浮かんだ表情を見て、予想は正しいと確信する。
……これ、俺が想定していたよりもずっと早く、王国内の政治的事情が水面下で動き出しているのかもしれないなあ。
準備なんてまだろくに整ってないのに、どうすればいいのやら。
原作通りならティアとサラにくっついておけば最終的に負けはないんが、ゲームじゃない現実世界でそんな単純にことが運ぶものだろうか?
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