第185話「ジーナなしで戦ってみよう」

「経験してみてどうだ? 今のところでいいから、感想を聞かせてくれ」

 

 と俺は話を振ってみる。


「意外とやることがすくなくてもどかしい。レベルの低い神官って無力なのだなと実感させられているよ」


 ジョットは悔しさをにじませながら答える。


「いや、それは間違っているな」


 俺は気まずく思いながら訂正した。


「お前がヒマなのはだいたいジーナが原因だ。彼女はこのあたりなら一人でも余裕で生き残れる程度の実力がある」


 いつまでも隠せるはずがないので、ジーナの力をにおわせる。

 それでいてここで全部開示はできないから、さじ加減を考えなきゃいけない。


「そうなのか……」


 ジョットが目を丸くしたところで、


「事実だと思います。立ち回り方も余裕も俺とは全然違います」


 とカルロが俺の言葉を肯定する。

 ソードマンだけに同じ前衛職としての差を肌で感じ取れたのかもしれない。


「うん、僕の認識がまだまだなんだなって思わされたよ」


 とジョットが力なく笑う。


「敵が一体だけならジーナなしで戦ってみるのもいいかもしれないな」


 彼らの成長の手助けをするのが目的だ。

 だからこそ、彼らに現在の自分たちの力を認識しておいてもらうのはアリか。


 ティアとサラにそんな必要なかったけど、彼女たちは例外でジョットたちが一般例である。


「いいのかい?」


 ジョットが食い気味に聞き、すぐにハッとなる。


「彼女なしでも大丈夫だろうか?」


 懸念をしっかり口にできる慎重さは、この際いい武器になるだろう。

 

「カルロがよく動けるので、シャドウドッグ一体くらいなら、いけるんじゃないかな。もちろん危ないと思ったらその時点で手を出す」


 軽いケガくらいならいまのうちにしておくのもアリだろうけど、さすがに言葉にはしなかった。


「……カルロ、どう思う? この提案を実行するなら、一番負担が大きくなるだろう君の意見が聞きたい」

 

 ジョットは即断せず、カルロへ問いかける。

 

「俺はやってみたいです」


 彼は迷わずに答えた。


「戦いを志すなら、いつかは危険な道を通るはずです。なら、いざというとき強力な援護を望めるいまのうちに、体験しておいたほうがよいと思います」


 彼の言葉にライルも同意する。


「わたしも賛成します。失敗しても取り返せる挑戦は、やる価値が大いにありますから」


 彼の意見はどことなく商人っぽいなと感じた。


「うん、ふたりが賛成なら僕もやってみようと思う。頼りになる友達がいることだしね」


 とジョットは笑顔で決断を下す。

 友達という部分に力がこもっていたので内心でこっそり苦笑する。


 リーダーとしてふるまおうとしてるならいらないと思うんだが、王国風の考え方なんだろうか?

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