第175話「バザー3」
「まさか帝国の方がいらっしゃるとは……歓迎しますよ、ラスター様」
ロイドは優しく言って、若い女性に人気がありそうな微笑を浮かべる。
「恥ずかしながらバザー自体が来るのが初めてで」
隠さずに話す。
「ほう。今回はどうしてまた?」
参加する気になったきっかけって知りたいものなのかな。
「こちらのサンドラ嬢やルクレティア嬢の紹介ですね」
ふたりのことを立てておこう。
「あと慈善活動に興味もありました」
具体的にどんなことをやっているのか知りたかったのは本当だから、別にウソはついていない。
「それはそれは。我らが女神カリ・フォスティに新しい縁に感謝を」
とロイドは小さく祈った。
ロイドは原作に出てきた記憶がない人物なので、今後どう関わってくるのか、さっぱり読めない。
「もっとも、このバザーはご近所付き合いが主な目的なのですが」
祈りを終えたあとにロイドは微笑む。
とは言っても教会関係者もいる以上、慈善活動の一面はありそうだけど。
「そうでしたか。何も知らないもので、お恥ずかしい」
疑問は口に出さず、彼の言い分をおだやかに受け止める。
「お若いのですからご存じでないことは多いでしょう」
ロイドは気にするなと笑う。
「ラスター殿は積極的に動いてみる方なので、ロイド様にとってよい縁になるかもしれません」
横からサラが助け舟を出してくれた、のか?
つまり俺とロイドが親しくなれば、ティアのためにもなるってことかと考えるのは、早計だろうか。
わからない部分だから、サラの意向を尊重するしていくほうで考えておこう。
「そうなれたら光栄だなと思います」
と俺は言ってロイドとは別れる。
俺たちと違ってロイドはまだやることが多いようだ。
「もしかして今のえらい人?」
と小声でサラに聞いてみる。
「わたしの予想ではえらくなる人、と申し上げておきます」
「そっか」
何とも判断に困るところだが、彼女の見立ては主人公を大いに助けたという設定のはず。
そのつもりでいるとしよう。
「他に何かわたしに言いたいことはありますか?」
とサラに聞かれる。
完全にそっちに目当てでのペアだと思ってるな……。
「特に今はないかな。今じゃなくてもいいし」
「それはそうですね」
と言ったもののサラは意外そうだった。
ひょっとして、俺は事務的なつき合いしかする気ないって思われてる?
「一緒にバザーを楽しもうって改めて誘ったら悪いか?」
軽く探りを入れてみるか。
「悪くはないですが、ティアを忘れないでくださいね」
サラはちょっと目を丸くしたものの、薄く笑って答える。
ティアのことを言われるのは予想通りだし、悪くない手ごたえだ。
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