第171話「バザー当日」
ジョットたちに安息日にダンジョンに行く約束をとりつけ、そのまま土の日を迎えた。
「教会主催の市民向けバザーだから服装はこれで正解だったみたいだな」
ティアたちに教えられていた場所に、少し早めに行くと準備で忙しくしている人たちがいるのだが、みんなラフな服装である。
あるいは教会関係者らしいものか。
帝族用の普段着だと浮く可能性を考慮し、ダンジョンにもぐる時の服装にしたのだ。
「御意」
実はジーナの提案なのでこれは彼女の手柄だと改めて褒めておく。
「さて、ティアかサンドラ嬢を探してくれ」
ラスター皇子とその従者が今日のバザーに参加するとサラのほうから話は通っているだろうが、俺たちの顔がわかるのは二人だけだ。
まず二人と合流したほうが話は速いだろう。
そして人を探すなら視力に優れるジーナのほうが俺よりも適任だ。
「カレン様ならそちらにいらっしゃいますが」
彼女の即答は俺の予想を超えていた。
「えっ?」
ジーナが指摘した位置にはたしかに鎧を着たカレンがいたし、カレンはすぐにこっちに気づいて笑顔で寄ってくる。
「ラスター殿とジーナ殿、お早いですね」
反応的にサラから聞かされていたんだろうな。
「カレン殿も参加するんだな」
正直、聖騎士が来るようなイベントだとまでは思っていなかった。
「サンドラ様から誘われまして。警備と労働力を兼ねて参加するようにしています」
カレンは笑顔のまま教えてくれる。
あの二人はたしかに警備が用意されるか。
「あなたがいらっしゃるなら、もっと戦力を用意されて当然なのでしょうけど」
カレンが心苦しそうな表情になったので、気にするなと伝える。
「大げさにするほうが目立って危ない。気づかれないのが一番安全だからな」
いると知られていなければ、狙われるはずがないという理屈だ。
「豪胆なお方ですこと」
笑って答える俺を見てカレンはくすっとする。
一緒にダンジョンをもぐったことである程度俺の性格はバレているからだろう、特に驚いた様子もない。
帝国第四皇子が現状狙われる理由がないと知っているからなので、豪胆とはだいぶ違うだろう。
否定するメリットがないので言わないが。
「せっかくだから何か手伝おうかと思うんだけど」
かわりに本題に入る。
早めに来たのは手伝い目的だったからだ。
「えっ!?」
カレンの意表をついたらしく、彼女は目を丸くして息を飲む。
そんなにかと思っていたところにティアとサラがやってくる。
ティアは紺のパンツに白のトップスというラフで動きやすそうな服装で、何も知らなければ美貌の町娘にしか思えない。
一方のサラは女性神官の服で、まだ幼さが残るものの神秘的な雰囲気を持っている。
「どうかしたのですか?」
事情を知らないサラが首をかしげならカレンに尋ねる。
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