第170話「バザーの相談」
別れ際、ティアが少し寂しそうな表情をしていたのが引っかかった。
ジョットたちのことは伝えていたし、特に気にしている様子はなかったのだが。
……ぼっち仲間だと思っていたら、意外と知り合いが多いと気づいてショックだとか?
友達をとられたというような感覚じゃない。
どちらかと言うと、自分だけ置いて行かれる寂しさに近いだろうか。
考えすぎならいいんだけど、一応フォローを入れるとしよう。
「サンドラ嬢にちょっと相談したいんだが」
ティアと何をするにしてもどうせサラはついてくるし、彼女が反対したらティアも自重してしまうだろう。
「何でしょう?」
帰り際呼び止めたというのにいやな顔をされないのはありがたい。
「この国の教会でバザーは開かれているのかな?」
やっていると知っているが、知らないふりをしておく。
「ええ。定期的におこなわれていますよ。参加するおつもりですか?」
サラは俺の質問の意図をすぐに察したようだった。
「そうだ。よかったら君たちもどうだ? サティも呼べば顔合わせができるだろう。あいつが素直に来るのかという問題はあるが」
我ながら悪くないアイデアだと思う。
顔合わせはもちろん、サティと教会に接点を作ることもできる。
「よい考えですね」
サラはうっすらと笑ってティアをちらっと見た。
「かまわないですよね、ティア」
「あ、うん!」
びっくりしていたらしいティアは急いでコクコクとうなずく。
「わたしたちにツテがあるところになりますが、異論はないですか?」
「当然だ」
俺はサラの確認に答える。
サラとティアが参加しやすいほうがいいからな。
「すぐに開かれるわけではないので、バザーに出せるものを調達していただけると、スムーズに事を運べると思いますよ」
「なるほど」
おそらくバザーにただ参加するよりも、品物を持っていくほうが向こうの心証がいいという助言だろう。
あるいはティアと仲良くしやすいって意味合いもあるのかも。
「バザーに出せるものってダンジョンのドロップアイテムでもいいのか?」
ダメって言われると参加ハードルが上がってしまうので困る。
「悪いわけではありませんが、物によっては買い手がつきませんよ。あくまでも善意の市民が参加しているものですから」
武器や防具はもちろん、価値が高そうな装飾品のたぐいも避けたほうがいいってことか。
「一度参加だけしてみて、参加層を目でたしかめたほうが無難なように思うんだが」
すくなくとも誰も買わないような物を提出するよりはマシなんじゃないだろうか?
「一理ありますね。そちらのほうがたしかに好ましいでしょう。ではそちらのほうで手はずを整えましょう」
サラはあっさり撤回する。
「その予定なら今度の土の日にでも参加できますね」
土の日は日本で言う土曜日で、安息日(日曜日)の前日に当たる。
サティの件は……いや、一度参加だけしてからのほうがいいか。
あいつを説得しようにも時間が足りなそうだし。
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