第169話「今は協力者」
「わたし、あの子と話してみたい」
ティアが言い出したのには正直驚いた。
現状の彼女はまだそんな強い意志を発揮すると思っていなかったからだ。
「ダメとは言いませんが」
サラは反対したいのを我慢してそうな表情で言う。
「わたしやラスター殿と一緒の時に話すという条件を守ってもらいますよ」
「いいの?」
ティアはうれしそうに目を輝かす。
「ええ。たしかにヒモ付きでない錬成師を抱えるのは、長期的に見てメリットのほうが大きいですから」
仕方なさそうにサラは言うが、これ原作と同じ言葉だな。
やっぱりティア自身が説得しないとサティは難しいって思っておこう。
「ありがとう」
「よかったのか?」
ゲームならこれで解決なのだろうが、これは現実であり、サラは血肉の通った人間だ。
どんな考えで判断したのか、できるだけすり合わせて把握しておきたい。
「あの子が仲間になるとはかぎらないですからね。ティアが説得できるなら、ティアのために働いてくれる見込みが少しはあるのでしょうし」
と手厳しい答えが返ってくる。
ティア自身にサティが惚れこまないかぎり説得できないし、そうなれば裏切らない仲間を得られるって推測したからか。
ほとんどその通りなのだろうし、だからこそサラは恐ろしいと思う。
主人公が不遇時代を乗り越えられたのはサラという頼りになる相棒がいたからだ。
サラが固定の仲間でいることが最大の主人公補正という意見が一部のゲーマーで提唱されたし、実は俺も賛成である。
「なるほど。言われてみればそうかもしれない」
もちろんそんなことは言えないので、その発想はなかったと驚いて見せた。
「えっ? わたしにできるかな?」
さっきまでの様子はどこへやら、ティアが自信なさそうな表情になる。
やっぱりこの子は深く考えずに感覚で動くタイプなんだろうなぁ。
「ラスター殿は協力者ではありますが、仲間と呼べるのか難しいところです。あなたの仲間を増やせそうな機会があるなら、試してみましょう」
とサラがはっきりと言ったせいでティアがぎょっとする。
「そ、そんなこと言ったら失礼じゃないかな?」
ティアはあわてて親友をたしなめる。
俺の機嫌を損なわなかったか、不安そうだ。
「気にしなくていいよ。現状俺たちの関係はそういうものだろうから」
怒っていないと俺はアピールする。
そもそもサラはある程度信頼し好感度を持ってないと、「協力者」として認めてくれることすらない。
おまけに面と向かって言われたとなると、いい感じの評価を得ていると考えられる。
「え、そ、そうかな?」
ティアが一瞬寂しそうになったのは、彼女の中で俺とジーナは「仲間」だからだろうか。
「友達だって言ってくれたのに?」
とティアが指摘してくる。
おっと、前に俺が言ったことと矛盾を感じたせいだったか。
「俺は思ってるけど、サンドラ嬢がどう思うかなんて、彼女の自由だし、そり信頼関係なんて、すぐに生まれるものじゃないからな。気長にやっていくしかない」
「……うん」
意識して笑顔を向けて説明すると、ティアは一応納得したようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます