第168話「サティは仲間にできる?」
一応ティアじゃないと説得できない可能性を考慮すると、タイミングを見て引き合わせたほうがいいな。
その場合、本人よりもサラのほうが障害になりそうだ。
あの二人にとって今の時点で有益な装備を作ってもらって、そこから紹介するという流れが理想的、というよりは現実的かな。
「じゃあな、もっと上手くなってやる!」
捨て台詞みたいな誓いの言葉につい苦笑し、屋敷に戻ろうとしたところで、ばったりティアとサラと遭遇する。
二人はどうやら図書館の帰りらしいと、抱えている本から推測した。
「それで? 今の女の子は誰?」
とティアから当然の質問が飛んでくる。
……この展開はあまりにもバカバカしくて想像すらしてなかった。
やむを得ず事情をすべて打ち明ける。
「将来有望そうな子どもかぁ……ラスターくん、不思議な縁を持っているね」
目撃していたからか、ティアはあっさり信じてくれた。
「素直に受け取らないなら、たしかに工夫が必要となりますね」
サラも理解を示す。
「もっともあの子が錬成師として大成できるのか、わかりませんが」
同時に疑問を投げることも忘れなかった。
「ここで俺が独自のツテを作ろうとしたら、な?」
俺の立場を改めて伝えると、彼女はそっとため息をつく。
「お察しはしますけど、周囲からいい目で見られないと思いますよ?」
「それは元からだ」という自虐まじりの返答は、サラの表情が許さない。
彼女はティアを悪評に巻き込むな、とけん制してきているのだ。
「そうなんだよな。何かいい知恵があったら教えてくれ」
知りたいのはティアやサラの評判を下げることなく、サティをパーティーの仲間とする手段である。
原作でも簡単な説明はされていたんだが、あれって俺がやろうとして再現できるのか怪しい。
可能ならティアとサラの(特に前者)の協力が欲しいところだ。
「……本人の意思がないと無理ですが、教会に保護されて後ろ盾になってもらうのが現実的でしょう」
サラの提案はおそらく一番無難で、サティの意思を除けば難易度も低いものだった。
この場合サティ自身の意思こそが問題で、だから彼女も最初に言ったのだろう。
原作だとサラがティの価値を認め、ティアがサティを説得し、クライスター家が保護して身元保証人となるストーリーとなる。
すぐには無理そうだが、原作通りだと数年後にはじまる展開なので、今あせる必要もないだろう。
「これは確認なんだが、俺がこの国であの子の後ろ盾になるのは無理なんだろうな?」
障害が多いと承知してるものの、流れ的に質問しないのも変じゃないかと思って発言する。
「無理とは言いませんが、帝国本国の協力が望めないかぎり、あなたの苦労が増大するだけですよ」
サラは善意からか忠告してくれた。
「やめておこう」
今、俺がサティを保護したいと言っても、帝国には無視されるだけだろうからな。
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