第164話「メルクスト商会」
「馬を管理、保護できる町かアイテムがないと、馬はやめておくほうが無難そうだね」
メルクスト商会を目指して大通りを歩き出しながらジョットが言う。
「そうだな。俺も故郷の時は多少利用したが、特殊なパターンだと思っている」
あれは【アセット】があったからこそできた力業だ。
俺の言葉にみながうなずき、チラチラとジーナに目を向けてくる。
「ところでひとつ聞きたいんだが……」
ジョットが遠慮がちに切り出して、
「君の従者はどこまでついてくるんだい?」
と質問される。
ジーナもダンジョン内部に同行していることまではどうやら調べていないらしい。
「ダンジョンにも連れていくぞ。話した通り俺の職業(クラス)は魔法使いだから、このジーナなしでお前たちを守り切れる自信はない」
俺より強いと明言するのは、政治的な事情も考慮してひかえる。
「ああ、なるほど」
三人の男子に理解が宿った。
彼女の職業(クラス)がアサシンだと言わなかったのはわざとである。
皇子がアサシンを連れているというのはこちらの世界でもあまりよろしくはない。
だからこそジーナは悪役皇子のラスターの従者なんだろう、たぶん。
「あ、あそこですよ」
ライルが指さした先にメルクスト商会の看板が出ている。
俺からすればゴシック建築の三階建ての大きな建造物に見えた。
大通りに面していることを考えればかなりすごいんじゃないか。
「立派な店だな」
「両親の頑張りのおかげでしょう」
ライルは照れ半分、両親を誇る気持ち半分という表情で受け止める。
しかし、この商会が原作だとメジャーな扱いにはならなかったのは何でだ?
ゲームシステム的にはいい錬成師が仲間にいるか、育っているどうかのほうが重要だったからだろうか?
「ライルぼっちゃんおかえりなさい」
従業員らしい男性が笑顔でライルを出迎える。
「今日はお客様を連れてきたよ。失礼のないように」
ライルに言われた男性従業員は、
「失礼いたしました。わたくしがご案内いたします」
見事な礼儀作法をもって俺たちに対応した。
「ダンジョン探索未経験者でも扱いやすい装備を見つくろってくれないか?」
店員に対して敬語を使わないのは、若干抵抗がある。
だが、この世界で皇子が敬語を使うべき相手と状況はかぎられていた。
多少は尊大な態度をとるほうが正しい。
「はい、ライル様から承っていた件でございますね」
男性従業員は手際よく三人分の防具と武器を持ってくる。
それぞれ神官用、剣士用、そして武装商人用だった。
「ぜひ手に取ってたしかめてください」
ライルの分も一緒に用意したのは、仲間意識を持ちやすいように計算してだろうか。
興味深く思っていると男性従業員からの視線を感じた。
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