第163話「頭が回ってなかった」
放課後、待ち合わせした校門前に俺とジョットが行くと、ライルとカルロのふたりはすでに来ていた。
「待たせてごめん。早いんだな、ふたりとも」
ライルとカルロは驚いたように目を丸くしながら、
「いえ、俺たちのクラスのほうがホームルーム早いんですよ」
と説明する。
「彼らのクラスの担任、ホームルームの時間が学園で一番短いことで有名らしいからね」
ジョットが笑いながら補足した。
「そうだったのか」
担任の教師のホームルームの時間までは全然頭が回っていなかったな。
俺の認識もまだまだ甘いということだろう。
「ラスターくんは留学生なのですから、仕方ないですよ」
とライルがフォローに回ってくれる。
「むしろ早くも溶け込んできている順応能力がすごいかと」
カルロも味方してくれるようだ。
「持つべきものは心優しい味方かもしれないな、ジョット」
「僕もそう思うよ。立場上、得るのは容易じゃないけど」
俺とジョットは笑みをかわし合う。
「今日のところはメルクスト商会に行くだけでいいのかな?」
笑みを引っ込めたジョットに尋ねられたのでうなずいて、
「放課後だとそこまで時間がないからな。『クロガネの迷宮』との往復時間を考えれば、無理しないほうがいいし」
と答える。
俺が持っている移動手段なら時間短縮も期待できるが、彼らのために使っていいのか悩ましいところだ。
何となくだけど、「一緒に強くなった」という意識を養ったほうが、将来のためなんじゃないかという予感があるのだ。
根拠があるわけでもないので、今後彼らとのつき合っていく上で変えるべきかもしれないが。
「しまったな。移動時間を意識したことはなかった」
ジョットがハッとする。
「馬か何かも仕入れたほうがいいでしょうか?」
とライルが首をかしげると、
「馬をダンジョンの外で放置するのは危険じゃないか? マジックアイテムか何かのほうがいいんじゃないか?」
カルロが腕を組みながら意見を出す。
実のところカルロのほうに賛成である。
「馬ってダンジョン探索という観点だとあまりメリットはないんだよな」
いずれわかることだし、今のうちに指摘するのは悪くないだろう。
「そうなんですか?」
ライルが確認してきたので、力強く首を縦に振り、
「他に手がない場合は仕方なく使うって感じだな。馬は維持費に金がかかるし、モンスターに捕食対象として狙われやすいから」
と説明する。
サモナーに乗り物になれる存在を召喚してもらうという手も、サモナーが魔力切れになったら使えないというリスクがあるので、個人的には好きじゃない。
まあ言い出したらキリがない、好みに左右される項目ではあると思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます