第161話「ここだけの話」

「僕らが行くとすれば、どこのダンジョンがいいだろうか? 『クロガネの迷宮』が無難かなと思っているんだけど」


 というジョットの提案にうなずく。


「妥当だろうな」

 

 思いついただけじゃなくて、ちゃんと下調べもしていることに安心する。


 ティアやサラとの行く候補にもあがっていたものの、結局『古の塔』などに行ったからなぁ。


「知っているのか。やはり君もダンジョンのことは調べているのだね」


 とジョットは言う。


「そりゃ難易度を知らずに突っ込むと、死ぬだけだぞ」


 適正を無視する愚か者に対してダンジョンは容赦なく牙をむく。


「う、うん」


 ジョットは平然としていたが、残りふたりはすこし怯んでしまう。

 まだ中等部だから、情けないとは言えない。

 

 俺だって死にたくない一心で頑張ってるだけで、必要を感じなければ危険な橋を渡る気になっていたかどうか。


「『クロガネの迷宮』なら心配は少ないと思うけど、念のため装備はしっかり揃えていこうな」


 ガチの素人だと最初のモンスターに殺される可能性だってあるんだから。


「わかった。できればつき合ってもらいたいんだけど」


 ジョットは当然頼んでくるよな。


「かまわないよ。今日の放課後でいいか?」


 鉄は熱いうちに打てって言うしな……たしかこっちの世界には存在しなかったと思うけど。


「え、いいのかい?」


 ジョットも今度の提案には目を丸くしている。


「強くなるのは早くて損はしないからな。都合が悪いようならやめておくが、どうする?」


 根回しの必要性を考えていたなら、今日の今日準備するとは思っていなかったのだろうな。


「いや、行きたいです。ちょっと驚いただけです」


 ライルが言うとカルロもうなずいた。


「決断も行動も早いですね」


 ジョットは圧倒されたような表情になっている。

 ティアやサラからはここまでの反応をされた覚えがないので、ちょっと新鮮だ。


 あのふたりもたいてい特殊な立ち位置だから、この三人の反応のほうが一般的なのかもしれないが。


「正直、男所帯のほうが気が楽だというのはあるよ」


「なるほど」


 ここだけの話という態度を見せれば、三人は納得と理解、それから同情が混ざった表情になる。


 女子相手だとどうすればいいのかわかんないというのは、この年ごろの男子の宿命なんじゃないだろうか。


 もちろん俺自身も含めてだ。


「サンドラ嬢とルクレティア嬢にはこっちで連絡しておく」


 と三人に伝える。

 毎日一緒に行動しているわけじゃないのだから、平気ではあるだろう。

 

 一瞬ティアのフルネームが出てこなかったのは秘密だ。

 

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マガポケでの連載記念更新です

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