第160話「認識の違い」
「そういうこともあるんだね」
ジョットは大して信じてなさそうだったが、追及もしてこなかった。
あまり食いついてくるようなら、反撃してくるつもりだが。
「君たちはダンジョンに入った経験はあるのかな?」
話題を変えるために質問した。
「一階層に出入りしたことならあるね。空気をつかむために」
まず最初にジョットが答え、残りふたりは同時に首を横に振る。
「初心者か……」
なら俺たちがフォローできるダンジョンのほうがいいか。
「初心者三人だとやっぱり難しいのかな?」
ジョットは憂いを浮かべて聞いた。
「その意識があるなら何とかなるとは思う」
ダンジョンを舐めてる初心者が一番面倒だし、引率なんてしたくない。
謙虚で慎重な人ならもちろん別だ。
ホッとしたところでライルがおそるおそる口を開く。
「初期の装備や物資ならうちの店から持っていけると思うのですが、チェックしていただいてもよいでしょうか?」
商人の息子なんだからそう来るよなと俺はうなずいた。
「もちろん。品物がよければひいきにさせてもらう」
メルクスト商会とのつながりなら正直持っておきたい。
原作で帝国に加担して破滅する組織ならお断りだが、彼らは心配いらないだろう。
「ありがとうございます」
ライルはすこしうれしそうだ。
帝国皇子の肩書きはこの段階だとそれなり価値があるのだろうな。
そんないいものじゃないって思っているのは俺くらいか。
「店はどこに行けばいいんだ?」
「よければ今日の放課後にでも案内いたしますが」
「じゃあ今日行くか」
即決するとライルは目を丸くして、確認するようにジョットに目を向ける。
「決断が早いね。見事なものだ」
彼は素直に感心していた。
「一緒にやっていくための準備を整える必要があるかなと思っていたのだけど」
と言って苦笑に変わる。
「政治とは別物だからな、ダンジョンってやつは」
利害関係の調整などであれば、ジョットの感覚は正しい。
しかし、ダンジョン探索では忘れたほうがいいんじゃないだろうか。
「いや、僕らとダンジョンに行くことをサンドラ嬢に伝えなきゃいけないだろうし、場合によっては調整も必要になるんじゃないかな」
ジョットには困惑されてしまった。
おっと、サラとティアの性格からすれば簡単な説明で理解を得られると思うが、彼が知っているはずもないか。
率直に話すと「関係の良さを匂わせた」と誤解を招くリスクがあるかもしれないな。
「まだ彼女たちとそこまでの関係じゃないから、君たちと仲良くしたところで何か言われるはずもないさ」
ここは逆に「親しくないから、交流に口を出される心配はない」ということにする。
「そうなのかい? たしかにサンドラ嬢ならありえるか」
ジョットはサラのことをある程度知っているらしく、納得してくれた。
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明日25日マガポケで漫画版の2話が掲載予定です
よろしくお願いします
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