第159話「友情(ギブアンドテイク)」
休みと言えば昼休みのことだろうという俺の予想は正しかった。
ただし、メンバーについては予想と違っていた。
「紹介したほうがいいだろうね。カルロ・オルストリンガムに、ライル・メルクストのふたりだよ」
「初めまして御意を得ます、ラスター殿下」
オルストリンガム、メルクストのふたりにかしこまったあいさつをされる。
学友と言っても今まで話したことがなかったのだから、皇族に対する礼儀を守ったということだろう。
てっきり一緒に食事をしたことがある面子がくると思っていたんだが……。
王国では貴族当主か嫡子以外、称号は名乗れないし呼ぶ際にもつけない。
だからこのふたりが貴族の次男以下なのか、それとも平民の出なのか俺には判断がつかなかった。
「カルロはオルストリンガム家の三男、ライルはメルクスト商会の跡取り息子なんだ。君にとって豊かさと幸運をもたらせるふたりだと、僕は信じているよ」
「君を信じよう、ジョット」
余裕のある笑みを作って応える。
友誼には友誼をもってというのが、上流のたしなみってやつみたいだから。
もっとも友情と書いてギブアンドテイクと読む、という但し書きを忘れてはいけないんだが。
「このふたりが俺たちに同行を望んでいると考えてもいいのか?」
俺はジョットに問いかける。
メルクスト商会は原作でも登場する店のひとつだ。
武器防具はもちろん、日用品や食料、消耗品まで広く扱っている。
そこの人間がいるのは探索者じゃなくて、支援者側かもしれないと考えたのだ。
「ああ、そうだよ。ふたりともしっかりした跡取りの兄がいるから、自分の才覚で将来を切りひらく必要があるんだ」
ジョットの説明にうなずいた。
「俺も同じようなものだぞ。立派な兄が三人もいるし、帝国は無能を捨扶持で食わせるなんて発想は期待できないんだ」
と俺はなるべくおどけて見せる。
シリアスな空気にしたらジョット以外が困るだろうからな。
「皇族は皇族で大変だね。うちは捨扶持で養われる未来はあるけど、周囲からの視線に耐え抜くだけの精神力が必要かな」
ジョットは笑い話で返してくる。
王国は帝国ほど苛烈じゃないはずだが、肩身の狭い思いをすることになるという意味では同じか。
「そういう意味じゃクライスター家のサンドラ嬢と仲いい君が羨ましいと言ったら、失礼になってしまうかな?」
ジョットは微笑を浮かべたままが、目は笑っていない。
露骨に探りを入れてきたな。
本命はティアのほうだと言っても、現段階じゃサラとジーナくらいしか信じないだろう。
「別に意図してたわけじゃないし、外から見れば勘繰られるような状況だと自覚はしている」
俺は肩をすくめてみせる。
帝国の第四皇子とクライスター伯爵家のご令嬢となると、釣り合いは取れてるんだよな、厄介なことに。
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