第154話「ロポール遺跡2」

 ロポール遺跡は全部で四階層までで、ボスはツインヘッドバッド。


 二つの頭を持ってそれぞれ火を吐いてくる大型のコウモリだが、低難易度ダンジョンのボスだから弱い。


 攻撃を避けたティアが剣であっさり真っ二つにしてしまった。


「これで終わり……?」


 彼女は拍子抜けした顔で言いながら、こちらを振り向く。

 正確には俺の右隣にいるサラを見たのだろう。


「ええ、お疲れさまです」


 サラはクールに答える。


「簡単だったね?」


 ティアはまだどこか釈然としない顔だった。


「簡単なのも不人気な理由のひとつです。その気になればすぐに終わるので、後回しにされるんですよ」


 とサラが説明する。

 俺にしてもあるあるだなと思い、内心苦笑したくなった。


 こちらの世界でもこの点は変わらないのか。


 ……原作と酷似してる世界だからという可能性もあるだろうけど、たぶん検証なんてできないだろうな。


「そうなんだ」


 ティアはよくわからないという顔でつぶやく。

 おそらく彼女はできることを順次片づけていく性格なんだろう。


 原作どおりと言えそうだ。

 最後に奥の部屋に入って地上へと転送される。


 さて、踏破ボーナスがちゃんともらえたか確認してみよう。

 ジーナと二人で確認してみる。


『状態異常耐性(小)』

 

 というスキルが確認できた。

 

「よしよし」


 状態異常耐性は意外と取得手段が少ないのだ。

 ここで取れるなら理想だと思っていたので、期待通りの結果に満足する。


「何かボーナスをもらえたの?」


 俺たちの様子を見ていたティアが話しかけてきた。


「ああ。欲しかった状態異常耐性が手に入ったんだ。これがあるかどうかで戦略が変わってくるからな」


 と説明する。

 今後末永くパーティーを組むなら、このことは打ち明けたほうがいい。


 戦略上大事なスキルだが、仲間にも隠したい切り札とまではいかないからだ。


「二人はまだ取ってなかったのですね」


 サラがすこし意外そうな顔になり、ティアは目を丸くする。


「二人だけで探索してたくらいだから、とっくに取得してると思ってた」


 と言ったのはティアだ。

 

「必要なさそうなダンジョンだけ選んだんだよ」


 と俺はポーカーフェイスで答える。

 

「戦略の妙ですね」


 サラは納得したようだったが、そんな彼女をティアがチラッと見た。


「やり方次第ではわたしたちもできたんじゃない?」


「危険のほうが大きいと判断したまでです」


 小声で話しかけると、すぐにサラが言い返す。

 ティアはリスク承知で探索をしたがったが、サラが認めなかったってことかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る