第152話「メリットの提示」
逆に言えばそこのダンジョンを踏破してスタンピードが起こるリスクを減らすのは、地元民に喜ばれる行動だ。
おまけに多くの貴族にとって目先のうまみがないので、敵意を買う心配もない。
領民と領地のことを思い、長い目で物事を考えられる人なら、むしろティアたちの行動を歓迎する。
「賢いプランじゃないか」
と俺が言うと、サラが少しだけ眉を動かす。
「あなたは識見があり、頭の回転も速いのですね」
彼女は真剣な顔をして褒めてくれたが、
「過大評価じゃないかな」
俺は肩をすくめてみせる。
実際は原作知識でインチキをしているようなものだ。
ティアたちの手助けになっているし、誰かに迷惑をかける行為でもないので、後ろめたくないんだが。
「現状ですとそれが精いっぱいでしょうね」
とサラは言う。
予想どおりだから驚かないが、彼女はこっちをじっと見ている。
「本当にわたしたちの手助けをお願いしてもいいのですか?」
「ああ」
とうなずいても安心するほど、サラは単純じゃない。
べつに納得させる理由が必要だろう。
「王国の男子とはそれなりの関係があるが、女性関係のツテは何もない。将来がどう転ぶにせよ、女性の感性を学んでおくのは損しないだろう」
もっともらしい俺のメリットを言葉にする。
「女慣れが必要ということですね」
とサラは納得した。
王国女子だって男慣れしろと遠回しに言われてるだろうから、受け入れやすい言い訳だろう。
「パーティーや集まりで男女ペアになることが多いものね」
ティアはティアなりに解釈したらしい。
実際、王国関係者にパーティーに呼ばれたとして、パートナーになってくれる子がいないというのは圧倒的なハンデになるのが貴族社会だ。
依頼すれば知り合いが何とかしてくれるだろうが、貸しを作ることになる。
言うまでもなくジーナは身分が違うので、パートナーとして連れていくことはできない。
「それだけだとこちらが受け取りすぎですが……」
とサラは言う。
だから受け取らないとは彼女は言わないだろうなと思っていると、
「また何かの形でもお返しさせてください」
と続けたので首を縦にふる。
「ああ。困ったときにでも助けてくれ」
軽い調子で答えておく。
ティアもサラも義理堅い性格なので、これは大きな一歩になってくれるだろう。
「では私たちが攻略するダンジョンについて、話を進めてもいいですか?」
とサラが言う。
「もちろんだ」
俺は即答する。
こういうことは早いほうがいいだろうしな。
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