【完結】転生皇子が原作知識で世界最強

第151話「現実」

「だが、俺は帝国本土であまり評価されてなくてね。ある程度なら帝国は何も言わないと思うぞ」

　と俺は打ち明ける。

「おたわむれを。評価されてない者を外国にやるなんて、ありえないでしょう」

　残念ながらサラはすこしも信じてくれなかった。

　ティアも半信半疑という面持ちだ。

　たしかに正確なことを言ったとは言えないが、原作だと切り捨てる理由を作るために国外に出すのが帝国である。

「帝国という国について、情報収集が甘いようだな」

　俺はいやみにならないように気をつけながら指摘した。

　最終的に彼女たちが勝つとは思うが、途中経過がどうなるかまでは予想がつかない。

　彼女たちは勝ったが、一緒にいた人たちは死んだ──という展開は遠慮したい。

　俺やジーナは確実に守られる対象じゃないからだ。

　だからタイミングや内容を選びながら助言はしていきたい。

「む。たしかにあなたの情報も入ってきてませんでしたね」

　サラはあっさりと認める。

　俺の情報が入ってこなかったのは、たぶん帝国内でも完全無視されてるような状況だったからだと思う。

「とは言え、俺にやらせたら君たちの評判が下がってしまうというなら、ナシにしよう。そこまで図々しくはなれないからな」

　と俺は言っておく。

　もっともサラが気にするのはティアの評判だけだろうけど。

「いえ、あなたの事情が許すならできることはありますよ。ティアとカレンと三人では足りない案件があります」

　サラはすこし迷った末、答える。

「サラの提案ならおかしいことはないと信用して、聞かせてもらうよ」

　こっちはすでに信用しているとさりげなくアピールしてみたが、彼女の表情には何の変化も見られなかった。

「不人気ダンジョンの踏破です」

　とサラは話す。

「……不人気ダンジョンって騎士団が管理するんじゃないか？」

　俺は予想しながらもとぼけてみる。

　人がよく入ってダンジョンは適度にモンスターが間引かれるので問題ない。

　なかなか踏破できない、あるいは興味を持たれないダンジョンは国や領主が管理下に置き、定期的に間引きをおこなう。

　それがこの世界の一般的な知識だった。

「本来はそうなのですが、騎士団は緊急性や危険度が高いものを優先して派遣されるので、危険度が低いものは事実上放置されているのです」

　サラは顔をしかめながら言う。

　ダンジョンは長期間放置されると大量にモンスターが発生して、近隣の人里を飲み込む「スタンピード」が発生するリスクがある。

　そのリスクを排除するのが冒険者や騎士の仕事だ。

　だが、難易度が低くて近くに大きな都市がないダンジョンは、万が一の被害が少ないという理由で、後回しにされる。

　ティアも納得がいかないという顔をしている苦い現実だ。