第146話「男子生徒との付き合い」
「ラスター殿、すこしいいだろうか」
と王国貴族男子に話しかけられたので、今日はこっちのターンだと判断する。
今日の面子は正直派閥がよくわからない。
現状だとティアによって没落させられる派閥でも、おろそかにはできないから面倒だな。
本当ならティアとサラとの仲を深めるだけに時間を使いたい。
特にサラやカレンは手ごわそうだから。
ただ、俺に下心はなかったとしても、周囲から見れば「王国貴族の女を追いかけ回してる帝国皇子」になるんだよなぁ。
こういうとき、ティアが男だったほうが都合がよかったと思う。
もっともその場合だと付き合い方がもっと違っていただろうが。
「教えていただきありがとうございます」
と俺は礼を言う。
彼らとはスポーツで体を動かしたあと、休憩時間で国内の情勢を教えてもらっているのだ。
もっとも現段階じゃそこまで詳しくはない。
せいぜい国王には王子が三人、王女が三人いてそれぞれ派閥に別れているってだけだ。
帝国でも持ってそうだが、最近まで期待されていないダメ皇子だった俺は何の情報も持っていない。
せいぜい第一王子、第二王女がティアと争った相手だと覚えているだけだ。
「あなたたちはどこの王子を支持しているのか、教えていただいても?」
とさぐりを入れてみる。
「第二王子のオスカー殿下です」
と答えが返ってきたので、一気に興味をなくす。
だが、態度に出すのはマズい。
ほどよい距離を保っているほうが賢いだろう。
第二王子は原作でほとんど言及されなかったくらいだから、おそらくティアとの間に遺恨は残らない。
ならタイミングを見てティアに話し、彼らを取り込むように提案してもいい。
もちろん断られることだってある。
と言うサラにつぶされる気がしているが、それでも可能性を最初からつぶすのはな。
「なるほど」
と端的に答える。
興味を持ったように思われたくないし、かと言ってどうでもいいという態度も出せない。
難しいところだが、俺の社交スキルの低さも原因のひとつか。
社交界にはすこしくらい出たほうがいいだろうか。
帝国にいたときは一度も呼んでもらった記憶がないんだが……。
「ラスター殿はどのような派閥をお持ちなのですか?」
情報提供の礼とばかりに聞かれる。
「残念ながら持ってませんね。俺は継承順位も低いですし、上の兄たちとは年が離れているので、俺を支持するうまみが貴族たちにないのですよ」
と俺は正直に答えた。
継承争いが決着して、勝利者に従えば監視を兼ねた人員を回してもらえるかもしれない。
だが、それは望むところじゃない。
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