第136話「ラサ遺跡⑦」

 いよいよ本命の第三階層だ。

 ドロップ率アップの仕事に期待したい。

 

「ここからはどうする?」


 とカレンに聞く。

 さっきまでの戦い方を続行するのか。


 それとも最初の戦い方に戻すのか。


「最初の戦い方に戻しましょう。あと少しという状況ですから、万全にいきます」


 カレンは指揮官として決断を下す。

 

「休憩もばっちりとったしね」


 とティアはリラックスした笑みを浮かべる。


「いつもどおりやれたら何とかなるはずです」


 とサラは淡々と話す。

 彼女たちの意見に賛成だったので俺は無言でうなずく。


「敵ですね。おそらくゴースト二体です」


 動きはじめると、すぐにジーナが言った。

 本来なら魔法や聖属性攻撃しか効かない強敵だ。


 もっともこのパーティーには脅威ではありえない。


「たまには私にやらせてください」


 と言ってカレンは前に出る。


「やぁ! 【流聖剣】」


 聖騎士が使えるスキル【流聖剣】を放つ。

 これは剣に聖属性をまとい、狭いながら範囲攻撃をするスキルだ。


 狭いダンジョンでアンデッドと戦うのに、とても有益なスキルである。


 レベルが上がっていけば広い範囲攻撃も回復魔法も覚えるので、可能なかぎり味方にほしい。


 帝国には彼女ほど強い聖騎士がいない分なおさらだ。


「指揮官が前に出るのはどうなんだろう?」


 戦闘が終わったとき、俺は笑いながら指摘する。

 カレンの性格上、これは言ったほうがいいはずだった。


「あ、そうですね。申し訳ありません」


 彼女は素直に詫びる。


「カレン」

 

 とサラが呆れると、


「ついつい体を動かしたくなりまして」


 とカレンは恐縮して言い訳する。


「状況的には仕方ないけど」


 ティアは彼女を擁護した。


「とりあえず探索の続きに戻りましょう」


 俺たちの目をはばかったのか、サラは追及をひかえる。


「そうだな。頼むよ、指揮官殿」


 と俺が言うとカレンはちょっと頬を赤くしながらうなずいた。

 皮肉ったつもりはなかったんだが、彼女には思うことがあったらしい。

 

「では引き続きジーナ殿に探索をお願いしつつ、お互いがカバーできる陣形を維持しましょう」


 と彼女はキリッとした顔で指示を出す。

 気を引き締めなおすのは悪いことじゃない。


 俺たちも一応注意しているが、


「前方と右手通路から敵です」


 ジーナの探知にはかなわない。

 

「前と横の同時ですか」


 とカレンが応答する。


 通路が複数ある場所ではありえる展開だが、このダンジョンでは何気に初めてのように思う。


「どうしますか?」


 ジーナはいつもの淡々とした口調で彼女に決断を要求する。

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