第134話「ラサ遺跡⑥」

「スピードタイプに魔法使いが合わせるのは、相当難しいはずなのに」


 とサラも目を丸くしている。


「いきなりってことはさすがにないですよね?」


 カレンも信じられないという表情で聞いてきた。


「まあジーナとはふたりでいろんなダンジョンを戦ってきて、何となくタイミングは知ってはいるから。ほかのメンツだったら無理だったぞ」


 俺は答える。

 さすがに完全な初見だと合わせるのは不可能だっただろう。

 

「なるほど。いままで積み重ねてきたものが、新しい形となって出てきたのですね」


 サラとカレンは納得したようだ。


「それでもすごいなぁ」


 とティアはまだ感心している。

 ……そこまですごいことはやってないないのだが。


「さて、俺たちはすこし休みたい」


 不思議に思いながらも追及はせず、カレンに要求をする。


「高速戦闘は神経をすり減らしますものね。ここで休憩を入れましょうか」


 彼女はすぐに快諾した。

 経験を積んでいるだけあって話が早い。


 魔力にはまだ余裕があるものの、精神は疲弊している。

 

「ああ。悪いが頼む」


 カレンはひとりでも戦えるのだろうが、やめておくのは理解できた。


 相応のレベルの聖騎士がいざというときカバーに入るというのは、安全性を考えるなら大事な項目だからだ。


 五人は背中をあずけあう形で円陣を組んで座る。


 ダンジョンや敵次第では上や下からの奇襲もあるが、ここラサ遺跡では心配いらないだろう。


 俺はジーナとサラに挟まれる位置で、ジーナが世話を焼いてくれている。

 ティアたちはと言うと、サラとカレンがティアの世話をしていた。


 それからカレンがサラの分もやって、最後に自分の分を自分でやる。


「……身分や序列がティア、サラ、カレンの順だと俺たちに教えているようなものなんだが、かまわないのか?」


 サラやカレンが堂々としているので、気になって聞いてしまった。


「ミスリードの可能性を考えていないあたり、あなたもまだまだですね」


 とサラが余裕たっぷりに微笑する。

 うん、これは手ごわい。


 知識があるからポーカーフェイス上手いなって感心するが、そうじゃなかったらまんまと騙されていたな。


「そうだな。俺もまだ未熟だ」


 ティアが何か言いたそうにしたが、先回りして俺は言う。

 ここでサラとカレンに警戒されるわけにはいかないのだ。


 ティアだけ攻略すればいいってわけでもないのが、面白いところだ。


 ……これはゲームじゃなくて現実なんだが、ゲーム的な楽しみに置き換えることで、ハードルを乗り越えようって闘志がわいてくるんだよな。

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