第132話「ラサ遺跡④」

 ティアとサラのコンビの連携は見事なものだと思う。

 ティアが足止めしてる隙にサラがしとめる。


 あるいはサラがけん制してひるませたところを、ティアが斬り込んで倒す。

 これをスムーズにやれているのは見事だ。


 おかげでひとつの可能性を思いつく。


「もしかしてこれまでに何回も組んだことがあるのか?」


 と俺はふたりに話しかける。


「あなたはごまかせませんね。そのとおりですよ」


 サラは微笑か苦笑か、あいまいな笑みを浮かべてうなずく。


「レベル上げ、こっそりしてたんだよね」


 とティアは微笑む。


「強く鳴りたかったから」


 と言ったとき、彼女から笑顔が消える。

 理由を知っているが、知らないふりをしよう。


「そうか。実は俺も強くなりたかったんだ」


 と共感する。

 

「だよねー」


 ティアはわかるわかるとうなずく。

 俺たちの立場は似たようなものだろう。


 自分の居場所を確保するため、未来をすこしでもよくするために、強さが必要なのだ。


 サラが複雑そうな目で俺たちを見ている。


 まだ俺のことを警戒しているが、ティアにとって信頼できる友人は欲しい──といったところだろうか?


 原作のティアは親友のために貧乏くじを引き受ける苦労人タイプだった。

 それを思い出せばわずらわしさなんて感じない。

 

「探索に戻りましょう」


 カレンがタイミングを見計らい、ゆるやかに俺たちの会話を中断をうながす。

 探索中の会話はけっして無駄じゃない。


 相手を理解するために必要だし、人目が多いところで触れ合うのが難しい俺たちは、探索中こそがチャンスだ。


 カレンも承知しているからこそ、ある程度までは何も言わなかったんだろう。


「わたしたちだけのレベル上げでいいのかな?」


 とティアが俺たちを気にする。


「いいよ」


 と俺は即答した。

 レベル上げもたしかに大事だが、コネづくりも重要なのだ。


 そして一番大事なのがティアとサラなのである。

 本人たちはおそらく気づいてないだろうが。



 ティアとサラを主体にしながら三階に足を踏み入れる。


「疲れはどうですか?」


 とカレンがふたりに聞く。


「すこし休みをいただいたほうがいいと思います」


 とサラが答える。


「わたしはまだ平気なんだけど」


 ティアは遠慮がちに親友をちらっと見た。

 前衛と後衛の体力差が出はじめたか。


 あと、ティアは剣で戦うが、サラは魔力を消費するという違いもある。


「じゃあ俺とジーナと交代してみようか?」


 と俺は提案した。

 俺もジーナもまったく疲労していない。


「先に言われてしまいましたね。お願いできますか」


 とカレンは苦笑し、承認する。

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