第126話「嘆きの砂を取りに行こう」

 俺たちはラサ遺跡にやってきた。


 馬車なら三日はかかるところを、カレンが所持している「アルバトロス・ウイング」というアイテムのおかげで一時間ほどで到着する。


 「アルバトロス・ウイング」は持ち主が行ったことがある地域に、本人を含めて最大六人まで運べるのだ。


 ティアとサラと一緒でよかったなと思った瞬間である。

 アルバトロス・ウイングは、いまの俺の手持ち素材じゃ作れない。


 いつか作れるようになりたいので、心の中の目標に入れておこう。


「ここがラサ遺跡」


 とティアがつぶやく。

 寂しい荒野の中にぽつんと立っている、灰色のレンガ造りの建造物がラサ遺跡だ。


「人の気配はあまりないですね」


 とジーナが言う。


 原作だとあまり人気がないダンジョンって設定だったが、こっちの世界でも変わらないのかな。


 学園が休みのときはたいていの仕事が休みだし、休みの日にわざわざもぐろうという人がいないのかもしれない。


 王国民のダンジョンサイクルはよくわからないけど。


「このダンジョンは不人気で、あまり人が寄り付かないはずです」


 とカレンが言う。

 聖騎士としての立場がある彼女なら、民の動向を把握していても不思議じゃない。


 つまり単に人気がないだけか。

 まあ人目がないならありがたい。


 帝国皇子と不遇な王女と聖騎士という組み合わせは、目立ちたくなくても目立ってしまう。


 こういう人目を忍ぶダンジョンのほうがいいかな……ばれたらばれたら誤解される余地はありそうだが。


「嘆きの砂がほしいとのことですが、地下三階以降の敵から確率で入手できるはずですよ」


 とカレンが俺を見ながら言う。


「ありがとう」


 俺は礼を返す。

 何に使うのか聞かれないのはすこし意外だったが。


「どんな敵が出るんだ?」


 すっとぼけてカレンに問いかける。

 ティアとサラは事前に教わっている可能性があると考えたからだ。


「アンデッド系、それもミイラや幽霊が多いですよ」


 カレンは即答し、それから俺に聞く。


「あなたがたはアンデット対策を備えてますか?」


「ああ。帝国でもアンデットが出るダンジョンにもぐっていたからな」


 そのための称号をとったりしていたのだ。

 ジーナもこくりとうなずく。


「なるほど、たったふたりでダンジョンに挑み続けていたなら、当然対策はできてますか」


 とカレンは言う。


 褒めたのではなくて確認、あるいはティアとサラに言い聞かせたんじゃないかという気がした。


「ふたりだけでってけっこう無茶だよね?」


 ティアが遠慮がちながら、カレンに話しかける。


「ええ、だからこそ頼りになると思いますよ」


 カレンはそう切り返した。

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