第127話「嘆きの砂を取りに行こう2」

「普通じゃないことをやり続けられる実力があるってことですものね」


 とサラが言った。


「教団の襲撃があったときも頼りになったものね」


 とティアが思い出すように言う。

 あれはたまたまだけどな。


 まあ褒めてもらっているんだから黙って受け取ろう。


「とは言えティアとサラのレベル上げもやらないと、だよな?」

 

 と俺はカレンに聞く。


「その意味でこのラサ遺跡は悪くありません。ふたりともアンデッド対策を用意できますから」


 彼女はそう答える。

 そりゃ将来の勇者と賢者だからなぁ……。


 まだ育ってないタマゴ段階だと言っても、前回のダンジョン探索でのふたりを見た感じだと心配するだけ無駄のように思う。


 「万が一」のことがないようにフォローだけはするつもりだが。


「どんなものか、簡単に教えてくれれば作戦考えるけど。それともカレン殿が作戦を決めるかい?」


 と俺はカレンに言葉を投げる。

 俺とジーナの立ち回りや戦闘力は前回である程度見せた。


 だからカレンが組んで指揮を執る、というやり方はありだろう。

 俺の意思を聞いたカレンはサラと目を合わせる。


 こっちが言い出すとは思っていなかったのか。


「ではお言葉に甘えましょう。ラスター殿、ジーナ殿ともに私の指揮下に入っていただきますが」


 サラとうなずきあったあと、カレンは確認するように言ってくる。


「それがあるじ様のご判断であれば」


 という言い回しでジーナはカレンの指揮を認めた。

 

「聖騎士殿、頼りにさせてもらうよ」


 と俺は言う。


「プレッシャーですね」


 カレンは苦笑する。

 不快そうじゃなく、余裕を感じさせる態度だった。


「カレンは小部隊を率いた経験もあるはずだから」


 とティアがちょっと得意そうに話す。

 彼女にとっては自慢の幼馴染のお姉さん、ということだろうか。


「まだ未熟な身の上なので、過大な期待は禁物ですよ。自分で言うことじゃないですが」


 と言ってカレンは再び苦笑する。


「そこは誰かがフォローすればいいさ。せっかく五人いるんだから」


 俺はそう言った。

 これがジーナだったら肩をぽんと叩くところだが、相手はカレンだからな。


 自重しよう……気にしすぎかもしれないが。


「だよね。私も頑張るよ。サラのほうが頼りになるかもしれないけど」


 ティアは笑顔で腕まくりしたあと、自虐する。


「あなたは自分ができることをやればいいんですよ。私がついていますから」


 サラは優しく彼女を擁護した。


 こうして間近でふたりのやりとりを見ていると、百合百合しいという評価があったのはちょっと理解できるな。

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