第123話「打ち合わせ」

 翌日、朝の校門でティアとサラがそっと近寄ってきた。


「嘆きの砂ですが、西のほうのダンジョンで入手できるみたい。わたしたちでも入れるところだって」


 とティアが言い、


「あなたたちさえよければ行ってみるのもいいだろうとカレンは言っていました」


 とサラが続けて言う。

 そしてふたりは俺をじっと見つめる。


 決断する権利は俺にあるということか。

 まあジーナは俺の意思に従うし。


「距離があるなら次の学校の休みにしようか」


 と提案する。

 さすがに授業が終わった後だと、難易度が低い近場でもないかぎりきつい。


 正直、いますぐ無理して強くなる必要があるかは疑問だし、ティアとサラがついてこれるかもわからない。


 ティアは頑張ってついてきそうだが……無理させるのはよくないもんな。


「それがいいよね。体力的にきついし」


 とティアも同意し、サラは無言でうなずいた。


「ところでなんてダンジョンなんだ?」


 とふたりに問いかける。

 俺が知っているダンジョンだったら想定が楽なんだが。


「ラサ遺跡っていうみたいだよ」


 ティアが答えてくれる。


「そうなんだ」


 知らなかったという顔で言うが、俺が知っているダンジョンだった。

 あそこはたしかに嘆きの砂が出たなぁ、と思い出す。


 まああそこならたしかにカレンを含めた五人なら何とでもなりそうだ。


「じゃあ土の日に行ってみようか」


「決まりだね」


「待ち合わせ時間は前回と一緒でいいよね」


 みんなで歩きながら待ち合わせ日時を詰めていく。

 そして校舎に入るところで別れた。


「……俺たちと一緒だとまずいのか」


 それなら校舎の外でも同じ気がするが、何らかの線引きがあるのだろうか。

 なんて思う。


「彼女たちの実家が反帝国、という可能性は低いですね」


 ジーナが小さい声で言った。


 そりゃ実家が反帝国だったら、そもそも一緒にダンジョンに行くこと自体を認めないだろう。


「反帝国派に目をつけられたくない理由がある、という可能性ならありそうです」


 さらにジーナは自説を話し、ちらりとこっちを見る。


「あるじ様はいかがお考えですか?」

 

「同じ意見だよ。今のところはね」


 他に答えようがない。


「ただ、ティアの実家のことがよくわからない。何らかの事情がありそうな感じはしているんだが」


「同感です」


 ジーナは即座に肯定する。

 彼女は頭の回転悪くないし、勘もいい。


 俺が前世の記憶を取り戻したらいきなり疑ってきたくらいだもんな。


「ティアのほうはともかく、サラには気を付けたほうがよいかと。彼女は私と同種だと思います」


 とジーナは忠告してくる。


 ああ、主と仰ぐ相手のためなら表情を変えず裏切ったり、不意打ちしてくるって意味ならそうだろうな。

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