第121話「今からでも祈ろう」

 ダンジョンの入り口のところで俺たちは解散し、ティアたち三人と別れる。

 まだみんなで連れ立って帰路につくほどの関係じゃないということだろう。


「ダンジョンの入り口まで帰還できるアイテムがほしいな」


 二人だけになったタイミングで、俺はジーナにこぼす。


「御意。時間効率を考えれば、持っていて損はないかと」


 彼女は基本的に俺を否定しないのだが、意見があれば言ってくれる。

 彼女も時間効率の観点からみれば同意見だということはうかがえた。


「羽のペンダントは数が足りないしな」


 素材自体はまだ余裕があるので、あと三人分を作ってティアたちにプレゼントするという手はある。


 もっともこれは、複数のダンジョンを行くようになってからでかまわないだろう。


 現状はまだ距離を取られている段階なのだから。


「何かアイデアはお持ちなのでしょうか?」


 何をどうしてそう考えたのか、あるいは直感なのだろうか。


「一応はな」


 とうなずいて肯定する。

 

 「戻り石」というアイテムが作れるんだが、王国だとダンジョンの外でも入手できたはずだった。


 たしか素材は嘆きの砂と鉄鉱石、ロックバードの羽じゃなかったか。


「嘆きの砂と鉄鉱石を探せば、戻り石というアイテムを作れるらしい」


 伝聞系を使ったのは、図書館などで情報を集めたのだとジーナに誤認してもらうためだ。


「嘆きの砂と鉄鉱石ですか。どこで採取できるのか、調べたほうがいいでしょうか」


 ジーナは可愛らしく小首をかしげる。


「ああ。誰かに聞いても教えてもらえるかもしれないが……あまり王国人に助力を願える立場じゃないからな」


 現状の俺が王国人にあまり借りを作るのはまずい。


 正直、誰がティアと友好的で誰が中立なのか、そして誰が彼女を疎んじているのか把握しきれていないからだ。


 反ティア派閥と言えばルクランジェ侯、トーポ侯、ザルツ侯がいたはずだが、いずれも他の王族の支持者たちである。


 彼らは名前が出ていたから覚えているけど、その派閥については詳細が書かれていなかったのだ。


 継承権争いについては触れられていたものの、話の本筋じゃなくて本編ストーリーを進めていたら主人公の勝利に終わったというだけだった。


 当時はまあRPGで政治争いを掘り下げられてもな、くらいにしか思わなかったんだが、こうなってくると困ったものである。

 

 もっともティアとダンジョンにもぐっている話は遠からず広まるだろうから、その時の反応からある程度は割り出せるか。


 学園生活が面倒にならないことを、今からでも祈ろう。

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