第119話「休憩タイム」

 俺は聖人なんかじゃないからな。

 ティアの性格がこっちに都合がいいならありがたくメリットを甘受しよう。


 第三階層を探索し続ける……ことはなかった。


「そろそろ休みましょう」


 とカレンが三体のスケルトンを倒したところで提案したからだ。


「ああ、そうだな」


 俺は最初に賛成する。


 ティアとサラをちらっと観察すると二人ともまだ余裕がありそうなので、いいタイミングだ。


 勘違いしてはいけないのは、二人ともまだ低レベルだということだ。

 どれだけ戦えても魔力やスキルを使う許容量は、レベル相応でしかない。


 レベルが上がれば二人ともガンガンあがっていくんだが、今のところはな。


「ご明察いただけて助かります」


 カレンは安堵半分、感心半分といった割合の表情で言った。

 

「足手まといなんだね……」


「三人ともそれを承知のはずですから」


 ティアはちょっと落ち込んでいて、サラが優しくなぐさめている。

 そのとおりだけど、足手まとい側のサラが言うのは何か違う気はするな。


 美少女が美少女をなぐさめている様子は絵になるので、沈黙とともに見守ろう。


 休むと言ってもレジャーシートを敷いてお茶を飲むのではなく、壁に背中をあずける程度だ。


 高レベルダンジョンになると壁に背中をあずけるのも危険になるが、今はやめておこう。


「それにしてもラスターくんとジーナさん、二人とも強いよね。帝国ってみんなそうなの?」

 

 ティアが興味津々という面持ちでたずねてくる。

 カレンとサラは関心なさそうな表情をしながらも、聞き耳を立てているようだ。


「どうだろうな? ひたすらダンジョンにもぐるだけで、他の連中と腕比べをした経験がないからわからないな」


 一応今の俺やジーナじゃ勝てない人は何人もいるはずである。


 序盤で退場する俺ことラスターとは違い、終盤のボスとして出てくるキャラクターもいるからだ。


「現在の私より強い方は五、六十人はいるかと」


 ジーナはひかえめに答えた。


 たしかに五、十人かな……邪神教団と組んでパワーアップする連中もいたはずだが、そいつらを除けば。


 次の上位職になれたらまとめてごぼう抜きできるんだが。


「ラスターくんたちが平均的ってわけじゃないんだね。理解した」


「帝国、やはり手ごわそう」


 ティアが無邪気な笑みを浮かべた横でサラがぼそっと言う。

 聞き取りにくかったけど、おそらくわざとだろう。


 俺たちに聞かれたくはない意見だってあるだろうから。


「一応王国滞在中に一気に強くなりたいとは思ってるんだけどな。……この年で入れるダンジョンがすくないって問題が立ち塞がるとは」


 軽くぼやいたがこれは本音でもある。

 

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