第118話「もしかしてティアは」

 ダンジョン内でもたついてしまった感は否めないが、これは仕方ない。

 

 初めて組む者同士でいきなり上手くいくのは、一人のプレイヤーが全員を操作するゲームだからだ。


 それでもシナジーを出すための運用法を考える必要が……話が逸れそうだからやめておこう。


 それぞれ考え方も目的も違う人間同士なのだから、ことあるごとにすり合わせをしていかないといけない。


 はっきり言うとかなり面倒くさい。

 相手がティアたちじゃなかったら正直あまりやりたくないことだ。

 

 単純にレベル上げてボーナスやドロップアイテムをゲットするだけなら、ジーナと二人だけで当分事足りているからな。


「ではそういうことで進みましょう」


 カレンの仕切りで俺たちは探索に戻る。

 こういう時、リーダーシップを発揮できる存在が他にいるのはありがたい。


 ティアはまだ育ててもらう段階だが、いずれカレンを超える存在になっていくだろう。


 その時に俺とジーナも仲間枠に滑り込むためのステップだ。

 もうちょっとダンジョン内でコミュニケーションをとりたいが、緊張してる子たちに何を話しかけていいのやら。


 緊張感がないと誤解されても困るが、何も話さないもちょっとな。

 迷ったものの、ティアたちに話しかけてみることにする。


「動きが最初よりもよくなってきたな。緊張はとれてきたのか?」


 言ってることは事実だ。


 最初の動きからしてレベル10未満じゃなかったが、さっきのほうがさらに動きはいい。

 

 理不尽系主人公、という単語が脳裏をよぎったくらいだ。


「う、うん。ちょっと慣れてきたかも」


「そうですね」


 ティアがゆっくり、サラが淡々と同意する。

 慣れるの普通の人より早いよな……俺が言えた義理じゃないかもしれないが。


「将来有望だな」


 ぼそっと言うとティアの肩がぴくりと震える。

 サラが一瞬こっちを責めるような目で見たが、すぐに感情を消した。


 俺が彼女の事情を知っているはずがなく、裏の意味なんてないと気づいたからだろう。


「おっと偉そうに聞こえたらごめんな。帝国皇族の悪い癖だと思う」


 彼女が何かを言う前に、先回りして謝罪する。


「ううん! ラスターくんは悪くないよ! むしろ自分の生い立ちについて、客観的に見られてるところがすごいと思うの」


 何やらティアが目を輝かせて、高い評価を話し出した。

 順調だと内心ほくそ笑んでいたのだが、さすがにこれには困惑する。


 どうしてこうなったんだ?

 心当たりがなく、腑に落ちない。


 もしかしてと思うんだが、ティアっていわゆるチョロインという存在だったりするのか?

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