第116話「方針を変更する」

 まっすぐ進んでいるとジーナが声をあげる。


「前方から敵、数は三です」


「なら私たちだけで戦うんだね」


 とティアが言った。

 すっかりジーナの索敵を信じているようだ。


「ホワイトベール」

 

 まずサラがティアとジーナに魔法でバフをかける。

 ジーナはまだ必要ないくらい強いんだが、そこで区別はしなかったか。


 そして前方から姿を見せたのは二体のゾンビと一体のスケルトンだ。

 どれも彼女たちなら普通に勝てる相手だろう。


「いきます」


 ティアが前進して一番左のゾンビに切り込む。


 その隙にもう一体のゾンビが彼女を噛もうと迫るが、ジーナが首から上をはね飛ばして防ぐ。


 残りのスケルトンが手にしていた剣をふるうが、ジーナが短刀で弾いて反撃で頭部を砕いてしまった。


「あ……」


 次に唱える魔法の準備をしていたらしいサラから間抜けな声が漏れる。


「ジーナ殿も強すぎますね」

 

 とカレンが言ってそっとため息をつく。

 前途多難は言いすぎだとしても、課題があるのは事実だな。


 ティアはまっすぐ、ジーナはさりげなく周囲を警戒して俺たちのところに戻る。


「ジーナは取りすぎだな。ルクレティア殿やサンドラ殿を鍛えるという目的があることを忘れないように」


 とジーナに言った。

 これは俺が言うべきことだからな。


「は、失礼しました」


 ジーナは俺に恐縮し、ついでにティアたちに詫びる。


「あはは……ゾンビに狙われたのを助けてもらったんだし、私は気にしてないよ」


 ティアは元気よく笑う。

 空気が悪くなるのを阻止しようという狙いもあるのだろうか。


「目指すべき領域を肌で感じ取れたのは事実です。これを糧としなければ」


 サラも気にしていないようだったが、こちらは自分への試練だと受け止めることにしたらしい。


 真面目な性格の彼女らしい発言だと思う。


「二階層だとこのメンツだと敵らしい敵はいないかもしれないな。カレン殿はどう思う?」


 いないと知っていても、カレンに確認することを怠らない。


「ええ。第二階層では敵が集団で出てくることはめったにないはずなので、思い切って第三階層を目指してもいいかもしれません」


 彼女は当初の方針を変更する柔軟なところを見せた。


「最初のうちはもうちょっと動きが悪いと言うか、俺たちがフォローする必要があると思っていたんだが……」


 というところで俺は語尾を濁す。


 ティアもサラも強すぎて、明らかにレベル6以下の動きじゃないからな。

 何も知らない奴が見れば15から18くらいだと勘違いしそうだ。


 俺とジーナが強すぎるなんて言われてるけど、本当にやばいのはこっちの二人だろ。


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