第115話「正直練習になってない」
「ラスター殿が強すぎて、連携以前の問題ですね」
戦いを終えたカレンは微苦笑を浮かべる。
正直俺も同じ意見だった。
安全第一で選ばれたんだろうが、正直敵が弱すぎて練習にならない。
まあここは我慢だ。
原作運命に俺が立ち向かうために最も重要なティアとの関係性のために。
「安全なほうがいいだろう。何も好き好んで危険に飛び込む必要はないし」
と言うと、
「えっ」
という声が二つ重なる。
声の主はティアとジーナだった。
この二人は俺のことをどういう風に思ってるんだろうなぁ。
「俺が強くなりたいのは危険に対応できる力を手に入れるためだからな。気毛穴g好きだから飛び込んでるわけじゃないぞ」
苦笑を堪えつつ二人に説明する。
「失礼しました」
ジーナはちょっと恥ずかしそうに自分の勘違いを認め詫びた。
気にするなと首を振っておく。
「そ、そうなんだ」
ティアは目を丸くして、
「それじゃ私たちと一緒だね」
と何やらうれしそうに微笑んでいる。
強くなりたい理由が同じということで、仲間意識でも芽生えたんだろうか。
そうなってくれたらありがたいので、育てていきたいね。
「次はジーナたち三人の戦闘か。ジーナなしでも大丈夫な気はしているが……」
ティアとサラの力はレベルを超えているので、敵の数が同じだったらジーナは見ているだけでよさそうだ。
「油断は禁物ですよ」
とサラが冷静な意見を言う。
「もちろんだ。出現した敵の数が四以上だった場合は、俺やカレン殿も戦いに参加させてもらう」
舐めプレイをして損害を受けるなんて、バカバカしいかぎりだ。
よほどの理由がないかぎりはやらないぞ……たとえば本国の兄皇子の油断を誘って警戒されないためとか。
「そのほうが慎重でよろしいかと思います」
カレンが大きくうなずいて賛成する。
今のところ俺とは慎重派同士話が合いそうだが、彼女がそう思われるように態度を見せている可能性は否定できない。
子どもの頃からサラの実家と付き合いがあっただけあって、武一辺倒じゃなくて貴族の腹芸もたしなんでいるはずだからな。
皇子として未熟で、貴族としてのスキルを積んでいない今の俺じゃ見抜けなくても不思議じゃない。
「決まりですね」
とサラが言った。
「う、うん。頑張るよ」
ティアが意気込む。
「肩の力を抜いたほうがいい。こっちは五人もいるんだから」
と俺は彼女に助言を送る。
緊張感を持っていたほうがいいのだろうが、硬くなりすぎたら逆効果だ。
「う、うん」
ティアは目を閉じてふーっと息を吐きだす。
すると適度に力が抜けていい感じになった。
あっさり修正できてしまうあたりはさすがだな。
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