第112話「ティアとサラ②」
「順調、だね」
第二階層へ行くための階段にたどり着いたところで、ティアがホッとしか顔で言った。
「まあ敵は弱めのところをカレンが選んでくれたのでしょうし、連携と言えるほどのこともしてませんからね」
うれしそうな彼女にサラが冷静な指摘をする。
「うっ……」
素直なところがあるティアはひるんでしまう。
「思ったよりいい感じだという点は賛成だな」
彼女をフォローする意味で口をはさむと、サラがじろりとこちらを見る。
余計なことを言ってティアを調子づかせるなという抗議だろう。
「初めてのメンバーがいるのにお互いの妨害になっていないのは、喜ばしい。そうおっしゃるのも理解できます」
意外なことにカレンが俺の意見を支持してくれた。
「カレン?」
意図を測りかねたのか、ティアの視線が彼女に向く。
「気をゆるめてはならないというサンドラ殿のお考えは正しいのですが、お二人の場合はまず成功体験を得てよいと思いますよ?」
カレンの説明を聞いたサラはなるほどとうなずいた。
「わかったわ。私の視野が狭かったみたいね。ごめんなさい」
彼女はティアと、おそらくついでに俺に謝ってみせる。
頑固な頭でっかちじゃなくて柔軟な部分があるのがサラの美点であり、主人公の側近だった理由だ。
「素直に聞く耳を持っているのが君の長所だな」
俺が言ってもおそらく反発しただけだっただろうけど、言わぬが花というやつである。
せっかくよくなった空気を悪化させる必要はない。
「……大らかで度量があるところがあなたの美点でしょうね」
サラはやや不本意そうだったが、褒め返しをしてきた。
クール系ツンデレヒロインかな?
いや、実際そういう路線のヒロインではあったか。
「うん。皇子様って聞いたから緊張していたけど、意外と話しやすいよね」
とティアがすこし砕けた感じで言う。
こっちが素なんだと俺は知っているけど、予想よりもすこし早いかな。
「あ、ごめんなさい」
言ってからハッとした彼女に俺は笑いかける。
「俺にとって皇子らしくないのは褒め言葉だから、何も気にすることはない」
帝国に対するイメージはあんまりよくないはずなんだよな。
思い込みはいけないから機会を見てリサーチしたほうがいいかもしれないが、今のところ俺の想像に反してる感じはない。
「そ、そうなの? ですか?」
なぜかティアは敬語に戻ってしまった。
「別に敬語使わなくてもいいぞ? 公式の場じゃないし、クラスメートだし」
と俺は言っておく。
さすがに公的な場で皇子である俺に敬語を使わないというのは無理な話だからな。
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