第111話「連携のポイント」

「前方から敵が三体です」


 まっすぐ歩いていてほどなくしてジーナが報告する。


「ありがたいかぎりですね。私は探知系のスキルを持っているわけじゃないので」


 とカレンが言った。


 ジーナがいなかったらどうしてたんだ? と何も知らない奴なら思うか、疑問を口にしただろう。


 原作準拠だと探知スキルが必要になった状況で、ティアが覚えて使いこなせるようになるんだよな。


 主人公補正ってやつだろう。


 主人公の初期職業は「ウォリアー」で前衛職のはずなのに、普通に魔法も覚えられるからな……。


 まあさすがに彼女たちが現状でそんなことを知っているはずもない。


 アンデッド系ならカレンとサラと相性がよく、めったなことにはならないだろうって理由で選んだのだと思うが。


「ではまた二人に戦ってもらおうか?」


 と俺は提案する。


「残りは私が?」


 ジーナが俺とカレンを順番に見た。


「ええ。お願いしますね」


 とカレンが代表して答える。

 戦闘に関する判断は彼女が決定権を持っているようだ。


「では一番右端を私が始末しましょう」


 とジーナは二人に聞こえるように言う。

 ティアとサラがこくりとうなずく。


「じゃあ私が一番左かな」


「では私は真ん中を」


 ティアとサラの分担がスムーズなのはさすがと言うべきなのか。

 この二人の間では意思疎通は簡単なんだろうし、カレンともやりやすいだろう。


 彼女たちにとって異分子になる俺やジーナと、上手くやれるかどうかがポイントになるか。


 ここで連携ができるようになれば今後のためにもなり、他のダンジョンへの挑戦もしやすくなる。


 おそらくカレンとサラはそのことは念頭に置いてるだろうな。

 ティアはどうなのか、今のところよくわからない。


 前方から現れたのはスケルトン三体で、全員が金槌を持っている。


 オーソドックスなタイプと言えるが、何でスケルトンになったら金槌を持つんだろうな?


 剣とか生前使っていた武器ならわかるんだが……ゲームの時はそういうものだからと思っていたが、現実になって考えてみたら不思議だ。


 打ち合わせ通り三人がそれぞれ三体のスケルトンを、あっという間に仕留めてしまう。


 今のところ順調だが、連携プレイはゼロだ。


 役割分担と言えば聞こえはいいが、三人がそれぞれ個人プレイで敵を倒しているだけにすぎない。


 まあいきなり上手くいくはずもないので、いい感じだなと思うところからはじめるのは悪くないだろう。


 俺とジーナだけなら立て直しようはあるが、今は五人で三人は俺の言うことなんて話半分くらいしか聞かないだろうから……ティアはもしかしたら違うかもだが。


 ティアたちと接点を作るという目標は達成してしまったので、あとはちょっとずつ仲良くなって関係を築いていくことだ。


 何もあせる必要はない。

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