第107話「ワープリング」
「古の塔」は王都の北にあるダンジョンで、馬車で行くと半日くらいの距離にある。
「今回は移動用のマジックアイテムを持ってきました」
と言ってカレンが【マジックポーチ】から取り出したのは、ワープリングだった。
ワープリングは指輪型のマジックアイテムであり、装着者が指定した面子を最大六人まで一緒に指定の場所へ転移させることができる。
かなり高額なアイテムだし、さらにカレンのものは銀色でおしゃれだと女性に人気があるタイプだ。
これを売ったらたぶん地方都市なら家を買えるだろうなぁ。
ティアとサラのためになると奮発したんだろうな。
現時点のカレンが個人で買えるかどうか怪しいから、援助でもされたんだろうかと勘繰りたくなる。
カレンは右人差し指にワープリングをはめて、魔力を流して俺たちをワープさせた。
ワープリングは装着者が行ったことがある場所にしかワープできないんだが、聖騎士になっているカレンが「古の塔」に来たことがあるというのは理解できる。
「ここが古の塔……」
ティアが不安をにじませた声を出しながら、目の前にそびえる朽葉色の建造物を見上げた。
見た目は五重塔を二十階建てにした感じだろうか。
「古の塔はアンデッド系モンスターが中心に出るんだっけか」
と俺は言ってみた。
「よくご存じですね。さすが図書館で調べものをしていただけのことはあります」
サラは驚きもせずに受け止める。
「私ならここを踏破していて、出てくるモンスターにもギミックにも対応できる自信があります。最初の場所としてはおススメです」
とカレンが説明した。
聖騎士の称号から連想できるように、彼女はアンデッド系に対して強い。
おまけに治癒系の魔法も使えるだろう。
適切なたとえかわからないが、サラを前衛で戦える戦士タイプにした感じかな。
古の塔は推奨レベルが15くらいだったはずだから、本来なら俺とジーナの二人だけでも事足りる。
踏破を目指すだけなら過剰戦力だと言ってもいいだろう。
「入る前に確認しておきたいのですが、あなたがたの現在レベルはいかがですか?」
とカレンが俺たちに聞いてくる。
一人で四人も守りながら戦う羽目になる可能性を考慮してだろう。
「俺もジーナもレベルは20に達している。調べた限り、ここの推奨レベルは15くらいだから、何とかなるだろう」
と答えるとカレンは好意的な笑みを浮かべ、サラは目を丸くし、ティアは「すごい」とつぶやく。
「なるほど。集団誘拐事件で活躍なさったのは、しっかりとした下地があってのことでしたか。納得です」
カレンは何かを理解したように言った。
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