第108話「『古の塔』へ挑戦」
古の塔の一階のドアをジーナがすまし顔で開ける。
緊張しているティアとは違い、彼女は落ち着きを払っていた。
「まず私が先行しましょう」
その彼女にカレンが話しかける。
彼女としてはみんなの盾になれる位置が好ましいのだろう。
そして今の状況下だと背後から奇襲される心配がいらない。
「わかりました」
ジーナは俺が指示を出すまでもなく、素直にカレンにポジションを譲って俺の横に戻る。
「陣形はどうする?」
と俺はカレンに聞いてみた。
「私とティア殿、ジーナ殿が前、サンドラ様とあなたが後衛というのが一般的になると思いますが」
彼女はオーソドックスな返答をする。
「そうだな。それでいいだろう」
反対してもいいのだが、特にやる理由もなかった。
もっと危険度が高いダンジョンで同じことを言われたら反対するんだが。
「承知いたしました」
俺がカレンの意見を支持したので、ジーナも従うつもりになったらしい。
もうすこし融通を利かせてほしいが……信頼できる味方がお互いしかいないような状況しか知らないんだから、無茶な話か。
……そう言えばティアたちは信じてもいいと、認識のすり合わせをしていなかったな。
つまり俺のミスと言えるので反省し、あとでフォローしておこう。
もっとも俺がティアたちを信じられると話したところで、ジーナの心にどれだけ響くかは別問題かもしれない。
それでもやらないよりはマシだ。
左からティア、真ん中にカレン、右にジーナという位置になり、俺はジーナの後ろ、サラはティアの後ろになる。
「ところでサンドラたちのレベルはいくらなんだ?」
たぶんそんなにレベルアップしていないと思うが、確認のために聞いておきたい。
「私は6、ティアは5です。足手まといになってしまいますが、よろしくお願いします」
サンドラは素直に打ち明けてぺこりと頭を下げて頼んで来る。
彼女はティアのためならいくらでも殊勝になれる性格だったな、そう言えば。
この点は変わりないようだ。
「いや、俺たちこそ君たちのおかげでダンジョンに入れたんだ。その礼になれたらいいと思うよ」
と答えてからちらりとカレンを見る。
「ただ聖騎士殿がいる以上、どれだけ役に立つ機会があるかわからないけどな」
聖騎士そのものはただの称号で、ハイメイジのような職業ではない。
それでも称号ボーナスはあるし、一定水準の強さに達しないと得られないものだから、カレンの強さに疑う余地はないだろう。
帝国と違って王国の騎士の選考基準はしっかりしているはずだし、聖騎士はそのえりすぐりの精鋭という扱いだもんな。
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