第90話「全校集会」
この時点で学園中等部のトップがいったい誰なのか、今の俺には想像もできない。
ティアとサラがいるくらいだからそこそこ大物が据えられている可能性はあると思う。
退屈になりそうな全校集会で、唯一楽しみなポイントだと言えるかもしれない。
適当に並んでもいいと言われたが、それはあくまでもクラス内のことらしく、学年とクラスごとではっきり集団が別れている。
俺たちは入り口から見て一番左端で、右側に同じく一年たちが並ぶ。
教師たちが入ってきて、老境の女性教師が壇の上に立つ。
「では今から全校集会を開始します」
その直後、ドオオオンという音が聞こえると同時に、建物が振動した。
「きゃああああ!」
「な、何だ!?」
早くも悲鳴をあげる女子、混乱する男子に対して俺は声は出さなかったものの、内心焦りを隠せない。
これって知らないイベントじゃね?
ラスターとジーナは原作がはじまるまでは生きていられると思いたいが、「原作の時いなかったから助かった」可能性を忘れちゃいけない。
それ考えると心臓の鼓動が一気に早くなる。
「あるじ様」
ジーナが発した声は大きくなかったが、鋭かった。
「まずは様子見だ」
もしかしたら単に地震なり、他の建物の倒壊なりといった出来事が起こっただけかもしれない。
「はい」
ジーナは不満そうだったが反対はしなかった。
何が起こっているか把握できないと、対処のしようがないと判断したのだろう。
そこへ多数の覆面人間たちが侵入してきた。
「動くな、その場で大人しく手をあげろ!」
と一人が野太い声で叫ぶ。
「ふざけるな、貴様ら! ここがどこだかわかっているのか!?」
男性教師が怒鳴りながら無防備に近づき、そして抜き打ちでばっさり斬られた。
「きゃああああああああああああああ!?」
「ひ、ひ、人殺しぃ!!!!」
悲鳴が起こり、恐怖が一気に広がっていく。
「ジーナ、今の一撃見えたか?」
俺はたぶんそうなんだろうなとしかわからなかった。
「はい。おそらくあの者のレベルは20くらいでしょう。一対一でなら勝てる自信があります」
ジーナは小声で答えてくれる。
真面目にダンジョンにもぐってレベル上げしてきた甲斐があったか。
……問題は一対一でなら、という条件がつくところだな。
パット見たかぎり、覆面の数は二十人を超えている。
「警備兵は何をしているんだ!?」
「誰か、外に知らせを」
教師たちが騒いでいるが、覆面たちは何もしようとしない。
まるで助けは誰も来ないってわかっているみたいだ。
近くの人間をちらりと見てみると、真っ青になって震えているか、それとも気絶しているか、近くの同性と抱き合っているかの三種類にわかれる。
落ち着いている俺とジーナがおかしいのか。
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