第91話「覆面たちの目的」
「お前たちの目的は何だ!?」
上等そうな服を着た白いひげの老人が覆面集団に問いただす。
見た目だけならこの人が中等部のトップってところだろう。
「クリサンとプレコの生徒だよ」
先ほどの野太い声の主が、意外なことに返答する。
「正確にはそのうち一人なんだが……いい機会だ、他の生徒たちも身代金になってもらおうか。お前らの親が大人しく払うなら、何も殺しはしない。意味もない」
と野太い声が続けてしゃべった。
テロリストに学校が占拠される展開かと思ったが、ちょっとばかり違いそうだな。
「せ、生徒への危害を大人しく黙って見てると思うとでも!?」
どこかで見た記憶がある青髪の若い女性が怒りを込めて叫ぶが、鼻の先に剣を突きつけられてひるむ。
「ご立派だが、俺たちの狙いは少数だけなんだ。そのために、他の生徒を危険にさらすのはどうなんだ?」
「ミリア先生」
テレサが声をかけると、ミリアと呼ばれた女性は悔しそうに引き下がる。
教え子のためなら命がけで戦うシーンがあるミリアじゃないか。
道理で見覚えがあると思った。
しっかし少数の狙いかあ……やっぱりティアのことなんだろうか。
言い回し的には他のターゲットもいそうだが。
ちらりとプレコのほうを見てみたら彼女はいたんだが、他の女子と違って涙を浮かべながらも覚悟を決めたような顔をしていた。
サラが心配そうな視線を時おり彼女に向けている。
冷静な奴が俺とジーナ以外にいるとしたら、おそらくこのサラくらいだろう。
いや、少し違うな。
彼女はおそらく覆面の狙いがティアだと思って、どうすればいいのか必死に悩んでいる。
ポーカーフェイスが上手いから落ち着いているように見えてるだけか。
貴族としてのスキルは高いと褒めるべきなんだろう。
「いいか、我々は暁団だ! 覚えておくがいい。いずれその名をとどろかせることになる」
野太い声の男がそう告げるが、あいにくと俺の記憶に残っていない。
原作のイベントに関わってくる固有名詞なら、基本覚えている自信はある。
つまりこいつらは大したことがないイベントか、あるいは原作とは関係がないイレギュラーな事件って認識でかまわないだろう。
あるいは原作主人公がひと皮むけるための試練イベントかもしれない。
今のところ気が弱くて礼儀正しくて、存在感がうすい女の子にすぎないもんな。
なんて思ってるうちに、ふっと思い出したことがあった。
暁団……主人公の過去に「邪神を信仰する暁団に狙われ~」という記述があった気がする。
数行ですまされてたからふーんと思って流したが、このイベントのことじゃないか?
「この中に帝国からの留学生がいるはずだ! 前に出ろ!」
えっ? もしかして、俺も狙われるのか!?
俺の中から余裕が吹っ飛び、他人事じゃなくなったのはこの瞬間だった。
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