第82話「クラスメート」
「うっ」
と小さなうめき声を発したのは俺の席の前に座る少女で、なんとサラだった。
おやっという顔を意識して作っておく。
そりゃ彼女がいるのは当然このクラスだろうが、現時点だと俺が彼女の正体を知っているほうがおかしいんだからな。
「君はたしか」
と言いつつ、続きはやめておこう。
みんなが見ているし、担任のテレサの発言があるかもしれない。
サラ自身はともかく、ティアのことはどう扱っていいものか、判断材料を集めたほうがいいだろう。
俺は高等部に入ってからのことしかわからないからな。
主人公サイドに加担したいなら、彼女には嫌われないほうがやりやすくなる。
気をつけよう……女心なんてさっぱりわからないが。
「転入生が二人やってきましたが、カリキュラムに変更はありません。二人は頑張ってついてきてください」
とテレサは淡々と俺たちに告げる。
俺は外国の皇族だから最初のうちは多少考慮されるかもしれない。
ただ、最初からアテにするつもりはなかった。
それだと原作ラスターと変わらないからな。
原作ラスターの未来と決別したいなら、彼とは違う行動をこれからもしていかなきゃいけない。
真面目にコツコツレベルあげしてきたおかげで、実技はおそらく何とかなると思うが、授業で確認しないとな。
高校から原作がはじまって、その時主人公のレベルは5からスタートだったから、心配はいらないはずだが。
なんて考えながらそれとなく教室内を見回して、またおやっと思う。
……主人公のティアがいないな?
空席はないので、今日は全員が出席していると考えていい。
ティアはこのクラスじゃないのか?
原作だと高等部のクリサンに入ることになって、憂鬱そうなモノローグからはじまっていたと思うが、細かい部分まで正直覚えきれているか怪しい。
……このクラスにいないと考えて、これからの行動を考えたほうがいいか。
このままサラと仲良くなって、ティアとも仲良くなるのが一番理想的だ。
だが、そうは上手くいかないだろうなぁ。
ティアは女の子なので、男以上にサラは彼女に接近する人間を警戒するんじゃないかな。
男同士だったらめんどうはもうすこし減らせたかもしれない。
前世で女の子と付き合った経験なんてないので、女の子たちが何を考えてどう感じるかなんて、全然わからないのだ。
ゲームの攻略は簡単だが、女の子の攻略は難しい……名言になりそうにないし、我ながらちょっと寒いな、これ。
とりあえずテレサの話を半分聞き流しながら、大事な将来についてあれこれ考えていく。
本当はよくないとわかっているが、後でジーナに聞いたら教えてくれるだろうからな。
優先順位は下げてもかまわないのだ。
ジーナと同じクラスだから可能な選択だが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます