第63話「次のダンジョン」

 休むのは大切だと言ったが、ジーナがいないと仕事が回らない。


 本当なら俺が手伝いのが道理だろうが、彼女相手には最悪の選択になってしまう。


 結果、ジーナの仕事がたまるだけになってしまうが、休まずにぶっ倒れても同じ結果になるということで許してもらおう。


 人手を増やせたらそりゃベストなんだけどな……帝国関係者じゃなければそこまで警戒しなくてもいいか。


 あるいはアンドロイド、ホムンクルスをという選択肢もある。


 今まで考えなかったのはレベル20台で、手に入れる手段が帝国だとなかったからだ。


 これが王国ならレベル10台でも入手するイベントがあったんだが。

 ないものねだりしても仕方ない。


 配られたカードを使って生きていくしかない。


 前世の記憶や原作知識というカードは普通に切り札レベルの強さなんだから、これ以上望むのはぜいたくってもんだ。


 ジーナは俺のそばでひかえまったりとくつろいだ時間を過ごす。


 俺の独りよがりにならなきゃいいなと思いつつ、彼女が用意した手抜き晩ごはんを食べた。


 手抜きと言っても残り物の野菜や魚を蒸したものに、穀物入りのスープで普通においしい。


 本人は恐縮していたが本当に手抜きかと思った。


 まあ皇族としての知識しかなかったら怒るのかもしれないが、日本人としての記憶からすれば、普通にぜいたくである。


 前世で自分一人の時の手抜き料理と比べたら、いろんな意味で上等だったからな。


「明日はそうだな……セイレーンの沼に行こうか」


 とジーナに指示を出す。

 セイレーンの沼は距離で言えば雷の川よりも城からは遠い。


 実質行くだけで半日かかってしまうだろう。

 だが、行く価値はあるんじゃないかと思う。


 アクアエレメント、スワープオルグあたりがよく出る敵だ。

 セイレーンはダンジョン名になるわりに出現頻度は高くない。


 そのかわり他のモンスターよりも手強く、もらえる経験値も多くなっている。


 低レベル踏破ボーナスガン積みを目指している俺にとっては、けっこう厄介なモンスターだ。


 セイレーンとの戦闘をできるだけ避けつつダンジョン踏破を目指すことになるが、ぶっちゃけ今まで通りと変わらない。


 気負う必要はないだろう。


「セイレーンの魅了対策はお持ちですか?」


 とジーナが不思議そうに聞いてくるが、当然のことだ。

 セイレーンは歌と音楽で男性を魅了してくる。


 さらに上位種族になれば性別不問で魅了してくるので、対策が必要のモンスターだ。


「ただのセイレーンなら魅了の射程範囲から魔法で倒すか、俺が魅了されている瞬間にジーナが倒す、で充分対策になる」


 魅了対策をここまで用意していなかった理由である。


「な、なるほど」


 ジーナは意表を突かれたようだったが、一応は納得したようだった。

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