第64話「セイレーンの沼」

 セイレーンの沼という名称だが、実際は湖と言ったほうがいいようなダンジョンだ。


 紫色に濁った水の横に灰色の土でできた通り道がある。

 たしかこの水は毒判定があるので、対策なしだと進むのはきついはずだ。


 とりあえず初日はたどり着いて羽のペンダントを使える状態にして城に帰還したので、本日二日めから本格的な探索である。

 

 入って右側の道を進んだ俺たちの前に、最初に姿を見せたのはスワープオルグだった。


 スワープオルグは緑色の体をした小鬼で、水のある場所限定で出現するゴブリンのようなものだろうか。


 強さも種族の性質もゴブリンとよく似ていた。

 こいつらは今の俺なら群れで出て来ても怖くない。


 アクアエレメントと同時に出て来たとしても、どちらも雷属性が弱点なのでいいカモになると言えるだろう。


「ジーナ」


 名前を呼ぶとそれだけで理解したのか、ジーナは疾風のように動いてスワープオルグを倒す。


 ゴブリンと同じなので経験値もドロップもあまりおいしくはない。


 まあ小鬼でも鬼なので、数をこなせば「対鬼」スキルをゲットできるんだが、こいつらだと他の鬼族よりも要求数が多いんだよなぁ。


 弱い上に群れで出てくるので、そうしないとバランスが調整できないってことなんだろう。


 もともと原作のバランスからして大味だったはずだが、今言っても仕方ないからいいや。


 スワープオルグを倒し先に進むと、沼からボコッと音がして水色の球体が浮上してくる。


 アクアエレメントで、水の精霊石が欲しい時にお世話になる相手だ。

 

「サンダー」


 ジーナでも倒せるだろうが、雷属性の魔法で片づけるほうが早いので、今回は俺が倒しておく。


 スワープオルグもアクアエレメントもドロップはしなかった。

 まあ最近ドロップがちょっとよかったから、ここで調整が入っても変じゃない。


 この世界はゲームじゃなくて現実なんだろうが、確率はある程度収束する点は同じだろう。


 ゲームと違ってメーカーの都合が入らない分、公正で厳格だったりして。

 益体のないことを考えつつ奥へと進む。


 この沼もまた「コイン式」ダンジョンで、第四区画が最奥だ。

 雷の川と違って区画ごとにボスを倒す必要がないのはありがたい。


 さらにスワープオルグを三匹倒して、第二区画へと足を踏み込む。

 雷の川と違って区画が変わったのはわかりにくい。


 違いがあるとすれば土の色がさっきよりも暗くなったことと、こちらでは黒色の雑草が生えていることくらいだろう。


 雷の川とは違う意味で、探索者にとって不親切なダンジョンだと言える。

 

 

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