第57話「火焔の祝福」

 火のほこらは第五階層まであるのだが、ジーナの先導のおかげであまり戦闘せずに到達する。


 ここまで来ると低レベル踏破ボーナスがもらえることはほぼ確実だ。

 やはりジーナは案内系統か、マップ系で何かを持っているんじゃないだろうか。


 そんな設定があることは俺も知らないので、隠し設定かこっちの世界で覚醒したものか。


 ……こっちの世界で覚醒するものなら、俺だって覚えられる可能性があるんだから気になる。


 ただ、今だと情報が少ないから検証するのも難しいな。

 兄たちとジーナ以外に俺が知ってて、原作との差を比較できる人物……。


 帝国には何人かいるが、「ラスター」が今接触するのは変に思われそうなキャラクターばかりかもしれん。


 味方はジーナだけだし、うかつに味方を増やすこともできないのが現状だ。


 検証は棚上げして、今は低レベル踏破ボーナスを集めていくことに専念してみよう。


 第五階層の奥に行き、光っている魔法陣の上に乗って地上へと転送される。

 これで火のほこら踏破達成だ。


 面倒でも達成してゲットとしたものをブローチでたしかめる。


「称号:火焔の祝福。スキル:火属性ダメージアップ」


 だった。

 火焔の祝福は火属性のダメージを軽減できる。

 

 そして火属性のダメージを増加でき、さらには攻撃に火属性を付与することもできるスキルだった。


 はっきり言ってかなり強い。


 この称号を持っていると短刀を使った物理攻撃主体のジーナが、火属性ダメージを与えることができるようになる。


 原作でもこの世界でも火属性ダメージは、物理ダメージとは別計算なのだ。

 もっとも俺のほうはそこまで恩恵は受けられないだろう。


 風や雷はともかく水の魔法に火を付与すると、相殺されてしまうか威力が落ちてしまうリスクがある。


 ……いや、待てよ?


 時々思いついている「原作とこの世界の差異」を検証するいいチャンスじゃないか?


 原作だとサンダーやウィンドショットに火の精霊の祝福の効果を付与する、なんてことはできなかった。


 ゲームシステムの問題だと思うが、こっちの世界にはそんなものはない。

 魔力にも時間にも余裕があるし、ちょうど人目もないから試してみるか。


 スキルのほうは他のスキルと共存できるのが最大の長所で、単体だとそこまで強いわけじゃないものだ。


 まあ他の「称号・スキルの効果と共存できる」時点でけっこうやばいけどな。

 火の精霊の祝福の効果を付与しながら、空をめがけて魔法を発動させてみる。


「サンダー」

 

 雷光が走るのが本来のサンダーだったが、今は赤い光が混ざっていた。


「今の見たか、ジーナ」


「はい。祝福の効果でしょうか」


 ジーナは興味津々という顔で答える。

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