第50話「水魔法を会得する」

 スライムを乱獲して無事レベル20になったので、ジョブクリスタルをジーナに入手してもらう。


 俺がやると変な顔をされるが、ジーナだとまたダメ皇子が変な遊びでも思いついたのかですまされる違いがある。


 ロイド兄たちに警戒されないことが大事だ。

 俺が力をつけて自分たちを追い落とそうと勘違いされると面倒なことになる。


 少なくとも政争や謀略で彼らと戦える可能性はまったくないからだ。


 味方の数が違いすぎる相手とまともに争うなんて時間の浪費だと断言してしまっていいと思っている。


 自分の部屋でジョブクリスタルを使って「ハイメイジ」になり、魔法の範囲化(狭)を会得が終了した。


「ふう」


「おめでとうございます」


 ため息をつくとジーナから祝福の言葉がかけられる。


「ありがとう。お前のおかげだ」


 彼女をねぎらうくらい何でもない。

 ジーナの尽力なしに俺がレベル20になるのはまず不可能だったもんな。


「もったいないお言葉。ありがたき幸せ」


 ジーナは目に感涙をにじませながら平伏する。

 彼女の忠誠心は薄まるどころか、さらに強くなっているようだ。


 この点についてはうれしい誤算だが、忠誠心を失うよりはるかにいい。


「明日からは火のほこらというダンジョンに行ってみようと思う」


「火のほこらですか」


 ジーナはダンジョンマップで位置をたしかめる。


「馬で三時間ほど離れていますね」


「まあ明日は行くだけでもいいだろう。羽のペンダントの力で、一度行けさえすれば次からは短縮できるんだ」


 と答えると彼女はうなずいた。

 

「あるじ様が羽のペンダントをお求めになった理由が、今さらながらわかりました」


 ジーナは尊敬の念で俺を見る。

 うん、やっぱり効果が実感できると強いよな。


「さて次は水魔法の取得だ」


 水魔法がなくても探索するだけなら何とかするかもしれないが、効率がかなり違ってくる。


 低レベル踏破を視野に入れるなら一つは習得しておきたいものだ。

 何がいいか……レベル20になってハイメイジになっているから、選択肢は多い。


 レベル5で覚える「ウォーター」は水の玉を撃つ。

 レベル10で覚える「ウォッシュ」は状態異常対策用の魔法。


 レベル15で覚える「アクアショット」はウインドショットの水版って感じで威力もある。


 レベル20で覚える「レイン」は威力は弱めだが、そのかわり攻撃範囲が広めだ。


 範囲化(狭)を覚えている今ならさらに範囲が広くなる。

 ここはアクアショットでいいか。


 ウォーターはさすがに今から覚えるメリットがほぼないし、効率を考えたら敵の一匹一匹を少ない手数で仕留めていく威力を望みたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る